個々人、会社同士が連携する「知的資本カンパニー」へ――高橋誉則(カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】

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Vポイントとの統合

佐藤 CCCのもう一つの柱は、Tポイント事業です。これは来春、三井住友フィナンシャルグループのVポイントと統合することになりました。非常に大きな経営判断だったのではないですか。

高橋 Tポイント事業にも、強い危機感を持っていました。携帯キャリアがポイント事業に参入してきましたし、PayPay、Google Pay、Apple Payなどスマホ決済サービスも出てきた。

佐藤 ポイント事業が、違うゲームになった感じですよね。

高橋 その通りです。その中で私どもの最大の弱点は、決済基盤を持っていないことでした。これまで私はどのキャリアと組むのかと、ことあるごとに聞かれてきましたが、今回、統合するVポイントは、日本で一番クレジットカードを発行している三井住友カードのサービスです。まさに決済基盤の会社ですから、非常に合理的な決定でした。

佐藤 新会社を作るのですか。

高橋 いえ、私どものCCCMKホールディングスへ三井住友フィナンシャルグループと三井住友カードから40%出資していただき、ポイントの基盤システムごと移管していただきます。

佐藤 名称はVポイントになる。

高橋 はい。VはVISAのVでもありますから、三井住友VISAカードを使うなら従来のTポイントに加え、ポイントが2階建てでたまることがアピールできます。またTポイントの名称のままでは変わったことがわかりません。名前を変え、あの青と黄色のデザインを残すことは、私たちのポジティブな選択でした。

佐藤 これは今年6月にニュースになりましたが、いつくらいから進められていたのですか。

高橋 昨年の初夏ですね。三井住友フィナンシャルグループの太田純社長と三井住友カードの大西幸彦社長に、会長の増田とともにお会いした。そこで何か一緒にやれるかもしれないというニュアンスの会話があって、後日、大西さんと私二人で会う機会があり、具体的に踏み込んだ話ができて、2カ月ほどで基本合意に至りました。

佐藤 驚きをもって報じられましたが、社内での反応はいかがでしたか。

高橋 社内でも、かなり驚かれましたね。

佐藤 この他にも、CCCは図書館事業を展開しています。佐賀の武雄市図書館には批判もありましたが、図書館作りに一石を投じました。

高橋 武雄市図書館から始まって、現在、図書館は7館を運営しています。ただ、いまは単純に図書館運営の受託をしているだけではなく、公共事業の枠組みの中で、さまざまな施設の設営を手伝っています。そうした施設を含めると16カ所あります。

佐藤 例えばどんな施設ですか。

高橋 宮崎県の延岡駅です。JR日豊本線の駅ですが、もう一本あった高千穂鉄道高千穂線が廃線になり、駅機能が縮小されました。このため一帯を再開発することになり、そこに私たちが参加した。ここでは駅に公民館的な機能を持たせました。駅に市民活動スペース、書店、カフェを併設してみんなが集まれる場所にした。「エンクロス」という名前ですが、縁が交わるという意味です。

佐藤 駅舎を地域センターにしたのですね。

高橋 そうです。図書館というハコモノに限らず、行政がやりたいことをお手伝いしていきます。自治体の施設の空きスペースを使って、起業家の育成やスタートアップ支援なども受託しています。

佐藤 地方自治体のコンサル的立場になっていきそうですね。

高橋 行政だけではなく、民間とも組みます。いま進んでいるのは、鹿児島県薩摩川内(せんだい)市の川内文化ホール跡地の再開発です。市と地元の九州電力が行っているプロジェクトにソフトを提供します。私どもはオープンスタイルで、いろいろな企業、組織とパートナーシップを結んでいきたい。何事も、一社でやらなくてもいいんじゃないかと考えています。

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