学力テスト「全国トップクラス」の秋田県で、公立高校の“定員割れ”が続出…難関大進学者数が増えない根本的な理由

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少子化と高校の定員割れ

 日本の少子化は深刻である。2023年の出生数は2022年に続いて80万人を割り込む予想で、過去最低を更新しそうな勢いだ。こうした急激な少子化、そして人口減少の煽りを受けて、統廃合の議論が進んでいるのが“地方の公立高校”である。定員割れが進んで空き教室が増え、「もはや授業が成り立たなくなる」と不安視されるケースが後を絶たないのだ。

 とりわけ、深刻な状況なのが筆者の故郷である秋田県だ。今年発表された秋田県の出生率は、28年連続でダントツ日本一である。厚生労働省の人口動態統計のデータによると、県内で2022年に生まれた子どもの数は3992人で、4000人を割り込む深刻な事態となった。今後、学生が増えることは10代の移住者を受け入れでもしない限り、不可能と言っていい。

 県は公立高校の統廃合を進めているが、生徒の急速な減少に追いついておらず、多くの高校で深刻な定員割れを起こしている。2022年、秋田県内の公立高校における、全日制課程の平均志願倍率は0.89倍であった(募集人数5597人に対し、4959人が志願)。乱暴な言い方をすれば、学校を選ばなければ必ずどこかには入学できてしまうのだ。

菅義偉元総理の母校も定員割れ

 地元の名士や医師の息子が集まるといわれる“進学校”も、決して安泰ではない。秋田県でもっとも偏差値が高く、毎年、東京大学合格者を送り出す秋田高校(普通・理数)ですら、たったの1.18倍しかない。秋田県南地方を代表する進学校、横手高校(普通・理数)はさらに低く1.01倍である。進学校であるにもかかわらず、ほとんどの志願者が入学できてしまう状況に陥っているのである。

 菅義偉元総理の出身校としても名高い湯沢高校は、今年で創立80年を迎える進学校である。しかし、志願倍率は0.86倍しかなく、なんと定員割れを起こしてしまっている。一般的な公立高校はさらに深刻な定員割れを起こし、羽後高校は0.35倍、西仙北高校は0.25倍、六郷高校は0.37倍である。秋田県内の学習塾に勤める塾講師は、「高校受験が完全に形骸化している」と嘆く。

「10年前であれば、到底入学できなかったような学力の生徒が、進学校に入学できてしまっている。秋田県はいわゆる私立の進学校がありません。そのため、公立の進学校はある程度は定員を絞るなどして、全体の学力の維持に努めるべきです。そうしなければ、県全体の大学進学率の低下に繋がってしまう恐れがあります」

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