酒とギャンブルを愛し、女性に愛された「伊集院静さん」 人間の哀歓を描く「無頼作家」の流儀【2023年墓碑銘】

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空気より流れを読め

 ギャンブル好きはなお抜けず、儲けを目標とせずにお金があれば投じる。その総額は数十億円と明かした。連載と借金に追われ原稿用紙を抱えて酒場でも書く。無頼作家と呼ばれた。

 自伝的小説3部作『海峡』『春雷』『岬へ』では主人公が失意、絶望を繰り返す。あきらめれば全てが終わる。そんな生き抜く覚悟が伝わった。

 エッセーの名手でもある。週刊誌の連載をもとにした『大人の流儀』は、共感を呼びミリオンセラーとなる。空気より流れを読め、みんなが行こうとする方向に必ず間違いがある、など核心を突く言葉が味わい深い。

 92年に女優の篠ひろ子さんと結婚。彼女の実家の仙台と東京の双方で暮らした。

 2020年、クモ膜下出血で倒れ手術を受けたが回復する。コロナの影響でカラオケを通じた作詞印税が激減したと笑っていた。好きなゴルフを続け、今年8月ごろまで元気だった。10月初旬に肝内胆管がんと診断され、同月27日、執筆活動の休止を発表した。

 11月24日、73歳で逝去。

 同じく防府出身の作家、高樹のぶ子さんは言う。

「大きな存在のままぱっと姿を消したのは、伊集院さんらしいと感じました」

 母親は健在。親より先に子供が亡くなることほど不孝はない、と語っていた伊集院さん。弱った姿を仲間に見せようとはしなかった。

デイリー新潮編集部

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