「ブギウギ」は笠置シヅ子、「らんまん」は牧野富太郎…モデルがいる朝ドラ作品の難しさとは

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増えるモデル付き作品

 調べてみたところ、近年の連続ドラマ小説はモデルのいる作品がかなり増えている。1961年度の第1作から1990年代までの61作品では、モデルのいた作品は10数本に過ぎなかった。

 一方、2000年以降の47作品では、モデルのいる作品が増加する。「あさが来た」(2015年度下期)、「とと姉ちゃん」(2016年度上期)、「べっぴんさん」(同下期)は、初めて3本連続でヒロインにモデルありの作品となった。

 現在も3本連続でモデルあり作品の最中。「らんまん」「ブギウギ」、そして伊藤沙莉(29)主演で裁判官・三淵嘉子さんをモデルとする次回作「虎に翼」(来年4月から)へと続く。

 モデルがいる作品の弱点があらわになると、連続テレビ小説全体にマイナスになってしまうのではないか。また、連続テレビ小説に「朝の偉人伝」という誤ったレッテルが貼られかねない。

 どうしてモデルのいる作品が増えたのだろう。それを辿ると、2010年度上期の「ゲゲゲの女房」に行き着く。

 その直前まで連続テレビ小説は大低迷期だった。2009年度下期の「ウェルかめ」の全話平均世帯視聴率は13.5%。NHKは強い危機感を抱いていた。このため、放送開始時刻を午前8時15分から15分繰り上げ、同8時にした。民放の情報番組のスタートに合わせた。

 さらに漫画家の水木しげるさんの妻・武良布枝さん(91)の自伝的エッセーを原作にした。布枝さんを演じたのは松下奈緒(38)である。これが功を奏して、全話平均世帯視聴率は18.6%に急浮上。モデルありは成功するという思いを強めたのではないか。

「ブギウギ」で意外性を出すには

「ブギウギ」の場合、主人公・福来スズ子(趣里・33)が花田梅吉(柳葉敏郎・62)とツヤ(水川あさみ・40)の実子でないこと、残念ながら弟・六郎(黒崎煌代・21)が戦死を遂げること、本人が楽団を結成することなどが、あらかじめ分かっていた。笠置さんの足跡と同じだったからだ。

 今後は笠置さんの生涯からストーリーをどこまで切り離せるかがカギになるのではないか。そうしないと、意外性が出ない。

 10月の序盤を振り返ると、スズ子が所属していた「梅丸少女歌劇団」(大阪)での労働争議の顛末を描いたり(14~18回)、実の母が西野キヌ(中越典子・43)であることを盛り込んだり(21回)、限られた時間内で笠置さんの歩みを追おうするあまり、積み荷オーバーになっていた気がする。

 この時期は視聴率も下がり、10月第4週(23~27日)の平均視聴率は個人8.7%、世帯15.7%。「らんまん」「舞いあがれ!」の同時期より低かった。やはり無理に笠置さんの足跡を辿らなくてもいいのではないか。

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