“恋愛ドラマが苦手”な「亀山千広」BSフジ社長は、なぜ“月9”の立役者になれたのか? 「コンプレックスがないとドラマは面白くない」という哲学
反町と広末は“兄妹”の設定だった
前編【「いまアラフィフの役者には“当たり役”があった」 「亀山千広」BSフジ社長が明かす『ビーチボーイズ』復活の理由】からのつづき
反町隆史と竹野内豊がW主演を務めた伝説の月9ドラマ『ビーチボーイズ』(97年)。そのオマージュドラマである『ビーチボーイズに憧れて』が、BSフジにて2024年1月6日(午後8時~9時55分/FODでは12月15日から配信)に放送される。主演を務めるのは、実際に『ビーチボーイズ』にあこがれを抱いているというお笑い芸人の小沢一敬(スピードワゴン)と徳井義実(チュートリアル)の二人だ。
あの時代、どうして『ビーチボーイズ』は誕生したのか? 同作をプロデュースした、BSフジ代表取締役社長・亀山千広氏に話を聞いた。(前後編のうち「後編」)【我妻弘崇/フリーライター】
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【写真】W主演の反町隆史と竹野内豊が眩しすぎる。20代とは思えない色気を漂わせる秘蔵2ショット
『ビーチボーイズ』は、男同士の友情を軸に、ひと夏の人間模様を描いた月9ドラマだ。当時、ラブストーリーが大半を占めていた月9に鑑みれば、同ドラマは異色とも言える存在だろう。
「夏のドラマを作ること。そして、反町君と竹野内君を起用すること。この二つは決まっていたことでした」
だが、当初は男同士の友情を軸にドラマを作るつもりではなかったと、亀山氏は微苦笑する。
「当時、すい星のごとく現れた広末(涼子)さんをキャスティングしようと考えていたので、反町、竹野内、広末の三者で恋愛模様を描くという構想でした。脚本は、僕がプロデュースした『若者のすべて』('94年)でタッグを組んだ岡田惠和さん。当初の設定では、反町君がお兄さんで、その妹に広末さん。親がいないという家庭環境の中、反町君が必死に稼いだお金で、高校に進学した広末さんが、その高校の先生である竹野内君に恋をする――。『若者のすべて』と『高校教師』を混ぜたようなドラマを考えていたんです(笑)」(亀山氏、以下同)
上がってきた第一稿に目を通すと、「書いている岡田さんから息苦しさのようなものを感じた」と振り返る。
「僕も読んでいてつらかった。これをずっと続けるのは無理があると思った。そもそも僕は、恋愛ドラマが苦手なんです」
「笑って泣けるホームドラマを作りたい」
亀山氏は、脚本家である故・野沢尚氏との対談で「感情は長続きしない」と語っている。
「恋愛ドラマは、好きという感情を無理やり長続きさせないといけない。第一話で告白して付き合ったら話にならない(笑)」
たとえば、同氏がプロデュースした『ロングバケーション』('96年)は、恋愛ドラマではあるが、「好きというセリフが一言も出てこない恋愛ドラマは成立するのか」というテーマのもとに作られたと明かす。
「長い時間をともにして、“やっぱりこの人は自分に必要な人だ”と思ったときに、あらためて面と向かって“好きです”と伝えるのかなって。もっと踏み込んだ表現。たとえば、“ずっと一緒にいてほしい”といった伝え方になるのではないかと思った。そういった恋愛ドラマであれば食指が動くのですが、王道とも言える大人同士の恋愛ドラマは、僕は苦手なんです」
当初考えていた恋愛模様を描く構想はあきらめることにした。何かアイデアはないかと模索していると、「岡田さんから、“夏の海の民宿を舞台にしたドラマはどうですか”と提案された」という。
「僕は、ホームドラマが作りたくてテレビ局に入社しました。企画した『アナウンサーぷっつん物語』や『教師びんびん物語』は、僕がやりたかったことです。月9という言葉が定着し、恋愛ドラマが隆盛する中で、ホームドラマが時流ではなくなってきていることは分かっていたものの、どこかで『男はつらいよ』や『時間ですよ』のような笑って泣けるドラマを作りたいという気持ちがあった」
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