「いまアラフィフの役者には“当たり役”があった」 「亀山千広」BSフジ社長が明かす『ビーチボーイズ』復活の理由
最高視聴率26.5%の伝説的ドラマ
反町隆史、竹野内豊がW主演を務め、男同士の友情を軸に描かれた月9ドラマ『ビーチボーイズ』(97年)。そのオマージュドラマである『ビーチボーイズに憧れて』が、BSフジにて2024年1月6日(午後8時~9時55分/FODでは12月15日から配信)に放送される。主演を務めるのは、実際に『ビーチボーイズ』に憧れを抱いているというお笑い芸人の小沢一敬(スピードワゴン)と徳井義実(チュートリアル)の二人だ。
なぜ、いま『ビーチボーイズ』なのか? BSフジ代表取締役社長であり、本家『ビーチボーイズ』をプロデュースした亀山千広氏に話を聞いた。(前後編のうち「前編」)【我妻弘崇/フリーライター】
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【写真】BSフジ・亀山社長が語る『ビーチボーイズ』秘話――。主演の二人に加え、まだあどけなさが残る広末涼子や、稲森いずみらが勢ぞろいした秘蔵カットも
「2020年に、4K・HDRリマスター版として『ビーチボーイズ』をBSフジで放送したのですが、それを機に周囲で『ビーチボーイズ』について話す機会が増えたんですね。ちょうどその頃、小沢君と徳井君と『ビニールハウス~恋愛促成栽培~』というBSフジの番組を作っていて、それこそ二人とも『ビーチボーイズ』に大きな影響を受けていると話してくれました。みんな、『ビーチボーイズ』が好きなんだなという印象を持ったんです」
ことの始まりを尋ねると、そう亀山氏は口を開いた。
『ビーチボーイズ』は、男同士の友情を軸に、ひと夏の人間模様を描いた月9ドラマだ。ラブストーリーがほとんどだった当時の月9に鑑みれば、同ドラマは異色とも言える作品だろう。だが、平均視聴率は23%、最高視聴率にいたっては26.5%を記録。反町隆史、竹野内豊、そしてヒロインを務めた広末涼子の出世作ということもあり、今なお根強い人気を誇る名作として語り継がれている。23年7月には、Blu-ray Boxが発売されたが、数あるフジテレビの名作ドラマの中でも、とりわけBlu-ray化を要望する声が多かった作品でもあったそうだ。
「僕は、2013年にフジテレビの社長に就任して以降、脚本づくりやドラマ作りには一切関わっていません。ところが、『ビニールハウス~恋愛促成栽培~』の後続番組である『恋愛マルシェ』の企画内で、小沢君と徳井君と僕の3人が、それぞれ15分の短編ドラマを作ることになった。進めていくうちに“負けたくない”って感情が芽生えて、思いのほか真剣になってしまって(笑)。と同時に、短編とはいえ、久々にドラマを作ってみると、とても面白かった。それで、何かできたらいいなという気持ちになったんですね」(亀山氏、以下同)
「喫茶ダイヤモンドヘッド」を舞台に
この時点では、『ビーチボーイズ』のオマージュドラマを作るつもりはなかったと笑う。だが、小沢、徳井両氏が熱烈な『ビーチボーイズ』ファンであることに加え、『ビーチボーイズ』に影響を受けている人が多数いることも後押しした。
「実は、『ビーチボーイズ』に登場する“民宿ダイヤモンドヘッド”を再現した、“喫茶ダイヤモンドヘッド”というカフェがあります。オーナーの方が、本当に『ビーチボーイズ』が大好きで、実際にドラマで使っていたパーツを一部再利用して再現しているほど。今でも覚えていますが、ドラマの放送が終わって間もない頃、“廃材はどうするんでしょうか?”という問い合わせがありました。それが、“喫茶ダイヤモンドヘッド”のオーナーさんだった」
美術を担当したデザイナーなど、各所から了解を得て、最終的にプロデューサーである亀山氏が許可を出した。セットの一部を受け継いだ「喫茶ダイヤモンドヘッド」は、現在も営業を続けている。『ビーチボーイズ』ファンにとっては聖地のような場所だ。ここを舞台に、オマージュドラマを手掛けたらどうだろうか――。伝説のドラマ復活に向けて、動き出した。
「ただし、僕はドラマの内容には一切口を出していません。自分がプロデュースしたものに対して、“憧れて”なんておこがましくて付けられない(笑)。『ビーチボーイズ』の脚本を担当した岡田惠和さんに経緯を伝えるなど、許可取りをしただけです。いわば、監修のような立場。優秀なスタッフ陣が、令和の時代に合うオマージュドラマにしてくれたと思います」
『ビーチボーイズに憧れて』には、本家『ビーチボーイズ』で桜井広海を演じた反町隆史が、反町隆史役として登場する。「反町君にとっても思い入れが強く、大事にしてくれている作品。彼が“出ます”と申し出てくれたときは、うれしかった」と亀山氏が目を細めるように、役者たちにとっても『ビーチボーイズ』は、特別なドラマとして生き続けているという。
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