お兄ちゃん・若乃花の土俵人生 新入幕時111キロの小兵力士は「横綱」の地位にもがき苦しんだ

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「横綱」という地位にもがき苦しんだ「お兄ちゃん」

 当時の若乃花は、ケガなどでチャンスを逸しているうちに、初土俵から10年が経過していた。それでも平成10年春場所、夏場所で優勝した若乃花は、ついに頂点に昇りつめる。

 史上初、兄弟横綱の誕生だった。

 横綱昇進後は相次ぐ休場に加え、負け越し(15日間皆勤)も経験。かつての柔和な笑顔は消え、傷だらけとなったお兄ちゃんは、「横綱」という地位にもがき苦しんだ。

 貴ノ花ファミリーが理想の家族と謳われ、相撲道に励む孝行息子という図式に、世間が違和感を覚え始めたのはいつの頃からだったのだろう。運命に導かれて花道を歩んでいた二人が、さらにまた別の運命によって、輝きを失ってしまう……。それは、相撲ブームの終焉でもあった。

 引退後の若乃花は、これまでのうっ積した思いをぶつけるかのように、アメリカンフットボールに挑戦。さらには実業家としてチャンコ料理店をチェーン展開するなど、才能を発揮する。そして現在は、タレント・花田虎上としてバラエティ番組で活躍する一方、テレビ、新聞で大相撲の解説を務め、横綱経験を生かした仕事を展開している。

武田葉月
ノンフィクションライター。山形県山形市出身、清泉女子大学文学部卒業。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『横綱』『ドルジ 横綱朝青龍の素顔』(以上、講談社)、『インタビュー ザ・大関』『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士』(以上、双葉社)などがある。

デイリー新潮編集部

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