没後60年「力道山」が夢見た東京五輪「南北統一チーム」 資金財団に莫大な寄付 会いたかった人は

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「平和統一」

 1962年の4月、北朝鮮の金日成主席の生誕50年を祝い、力道山は自分で調達したベンツを贈っている。こちらは同国の「国際親善展覧館」に今でも飾られている。

 敬子夫人は2005年、毎日新聞の取材に、こう答えている。

「主人は(永世中立国の)スイスにあこがれてたんですよ。新婚旅行はぜひスイスにって。で、現地に着くと、グランドホステスに、いずれ住みたいから、いい土地あったら教えてくれって、アドレスを渡してね。時代、そして、国にほんろうされ、疲れていたんでしょうね。平和な国でゆっくり生活したかったんだと思いますよ」(2005年3月4日付・夕刊)。

 前述の、1962年に北朝鮮に贈られたベンツには、力道山の直筆による書がついていた。以下の4文字が大書されていたという。

「平和統一」

 韓国生まれの大木金太郎が、日本の酒席で後援者から桔梗の花の話題をされた時、わからなかったことがあった。桔梗はその根がキムチの原料になることで有名な花だったが、韓国ではトラジと呼ばれていたのだ。

 すると、トイレで顔を合わせた力道山が言った。

「お前、桔梗を知らないのか。トラジのことだよ、トラジ。俺たちの半島の花だ」

 それは、力道山が生前、大木に唯一使った、ハングルでの会話だった。

 亡くなる3か月前、前述の資金財団に寄付金を渡した際、力道山はこう語っている。

「アジアで初めて開かれるオリンピックを成功させるためにも、これからも協力は惜しまない。ローマ大会でね、世界のみんなが協力し合ってるのを見て、非常に気持ちが良かったから」

瑞 佐富郎
プロレス&格闘技ライター。近著に『アントニオ猪木』(新潮新書)、『アントニオ猪木全試合パーフェクトデータブック』(宝島社)など。本文でも触れられた新刊『プロレスラー夜明け前』(スタンダーズ)が現在発売中。BSフジ放送「反骨のプロレス魂」シリーズの監修も務めている。

デイリー新潮編集部

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