いよいよ交渉大詰め…メジャーが惚れ込んだ山本由伸のレインボー・ボールとは何か
追い込んでもカーブを投げる自信
「山本のカーブは投げ方が独得です。最後は親指で押し出すようにして投げています」(オリックス関係者)
名投手の「カーブ」といえば、過去にはこんなことも。現・東京ヤクルトスワローズの高津臣吾監督(55)が米球界に挑戦した04年、24試合連続無失点を記録している。およそ2ヶ月もの間、「ゼロ」に抑えたその決め球は「カーブ」だった。現役時代の高津監督にはシンカーのイメージも強い。しかし、米球界ではアンダースローから放たれるカーブの軌道と、緩急が最大の武器となっていた。
「山本といえば、キレのあるストレートとスプリットで知られています。スライダー、カットボールなど、球種も多彩ですが、カーブというイメージは少ないですね。速いストレートにスライダー、スプリットの印象が強い」(スポーツ紙記者)
興味深いデータもある。23年度版選手名鑑のなかに「球種別・配球の割合」が掲載されているが、山本は全投球の43%がストレートで、スプリットは30%。カーブが17%だ。カーブの割合を、オリックスの他の投手と比べてみると、意外と多いことがわかる。
宮城大弥(22)は11%で、山崎福也(31=日本ハム)は5%しかなかった。また、「2ストライク後」になると、スライダーの割合が34%まで増えるが、それでもカーブは20%もあり、宮城は9%まで減り、山崎にいたっては2%まで激減する。山本は実は「カーブピッチャー」と言っていい。
高校野球など、アマチュア球界を取材するライターによると、
「近年、投手に変化球の持ち球を質問すると、真っ先に返ってくるのがスライダーです。とくに高校生はスライダーを得意にする投手が多く、カーブを決め球にする球児は少なくなりました」
プロ野球やメジャーリーグの影響もあるのだろう。カーブを多投していた桑田真澄・巨人二軍監督(55)や工藤公康氏(60)が引退した後、NPBでも、ここぞという場面でカーブを武器にする投手が少なくなった。
大谷翔平(29)もスライダーの進化系とされるスイーパーで、今季前半戦に勝ち星を量産していた。山本の場合、スプリットのキレ味が鋭すぎて目立たなかっただけで、米球界は「希少なカーブ投手」としても評価していたのである。
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