ラーム リブゴルフ移籍の波紋 「サウジに魂を売り渡した」と激怒するファン、メディアの批判も超過激に
広がる「不安」と「戸惑い」
リブゴルフが創設され、フィル・ミケルソンやダスティン・ジョンソンといったスター選手が次々に移籍していったとき、PGAツアーの選手たちは離れていった選手に冷たい視線を送り、「僕らはPGAツアーで戦い続けるPGAツアー選手だ」と胸を張っていた。
しかし、世界のトップ3に数えられ、PGAツアーの看板選手の1人だったラームまでもがリブゴルフに奪われた今回は、PGAツアーの選手たちから「不安」や「戸惑い」の声が聞こえてきている。
マキロイが選手会の理事を辞任し、「代打」を打診されたラームがそれを断った後、最終的に理事に就任したジョーダン・スピースは、「ジョンが抜けたことはPGAツアーにとって間違いなく大打撃だ。でも、ジョン自身の選択を止めることはできない。周囲にはコントロールできないことだから、どうしようもない」と語った。
マキロイが気になるのは、PGAツアーのダメージもさることながら、ライダーカップの欧州チームの顔ぶれのようで、「出場資格を見直す必要があるのでは?」と不安を隠し切れない様子だ。
出場停止処分
一方、PGAツアー自体はどんな反応を示したか。ラーム移籍の発表直後は静観していたが、4日後の11日にはラームのメンバーシップを停止し、出場停止処分を科した。
PGAツアーのジェイ・モナハン会長とリブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」のヤセル・ルマイヤン会長は、すでに今年6月に統合合意を発表し、その際、モナハン会長は「リブゴルフ選手がPGAツアーに戻る道を作る」と公言した。そして、現在はPGAツアーの理事が中心となってPIFとの統合に関する具体策や詳細を検討中であり、その正式発表を行なうデッドラインは12月31日とされている。
ラームの移籍はその発表の前ということで、これまでの移籍者と同様に出場停止処分が科された。このことを「形式的なこと」「想定内のこと」と見る向きは多い。
だが、リブゴルフ選手がPGAツアーに戻る道が12月31日に発表される可能性がきわめて高いというのに、それでもわざわざラームに出場停止処分を言い渡したのは「PGAツアーの意地とプライドによるものではないか」「嫌がらせのようなものではないか」といった声も上がっている。
いずれにしても、ラームはディフェンディング・チャンピオンであるにもかかわらず、2024年シーズンの開幕戦、セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズに出場することはできず、それ以降もPGAツアーの大会には出場できないことになった。ただし、すでに制覇しているマスターズや全米オープン、そして他のメジャー大会には出場することができる。
ラームが出場停止処分を科された結果、得をした選手もいる。ラームがフェデックスカップ・ランキングから外されたことで自身のランクが繰り上がり、トップ50に滑り込んだマッケンジー・ヒューズは、来年のシグネチャー・イベント出場権を獲得。そして、アレックス・スモーリーは60位にアップし、AT&Tペブルビーチ・プロアマと「ジェネシス招待への出場権を獲得。カール・ヤンは125位に食い込みフルシード権を獲得した。
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