川勝静岡県知事のリニア建設「尊重したい」発言の真意とは?
一瞬、雪解け到来を思わせるような一言だった。11月28日の会見で、「(JR東海からの提案について)リニア工事が一歩前進したというお考えですか?」と聞かれた川勝平太静岡県知事が、「尊重したい」と答え、記者たちを驚かせたのだ。どういうことなのだろうか
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「リニア中央新幹線の静岡工区における“水問題”は10年に及びます。トンネルから毎秒2トンの湧水が見込まれ、大井川上流部の水量が減少する可能性あり、とJR東海が報告したところ、河川管理者でもある川勝知事が“全量を大井川に戻せ”と要求したのです」(地元メディア記者)
以来、知事はハードルを上げて着工を認めず、トンネル工事は止まったまま。そこで、JR東海が出した切り札が「田代ダム案」だ。
「工事予定地のすぐ下流に東京電力の関連会社が管理する田代ダムがあります。そこで東電と掛け合い、トンネルからの湧水量と見合う分の取水を減らしてもらうことになった。大井川流域の自治体からも反対の声は出ませんでした」(同)
土についてクレーム
が、知事の「尊重」発言を真に受けてはいけないと言うのはジャーナリストの小林一哉氏である。
「会見を受けて、いくつかのメディアは知事が軟化したかのように報じましたが、最後まで聞いていると、ダム案についてもボーリングなどの事前調査を認めないかのような内容だった。知事の意向を忖度する県の専門部会が、“生態系への懸念”を言いだす可能性が高い」
川勝知事は「土」についてもクレームをつけている。リニアの工事は370万立方メートルの発生土が出るが、近くの「燕(つばくろ)沢」などに置く方針だ。ところが、昨年現場を視察した知事が「(発生土で)深層崩壊を起こす可能性がある」と言い出したのだ。
ちなみに、JR東海は現地調査とシミュレーションを行い安全性を県に報告済み。同社に聞くと、
「静岡県が発生土置き場に関して、深層崩壊等が発生した場合にどこでどのような被害が出ることをリスクとしているのか、さらに、大井川のこの区間を管理している静岡県が、発生土置き場のない現状において深層崩壊等についてどのような事態を想定し、どのような対策を施しているのかについて、具体的にお聞かせいただくようお願いしているところです」(広報部)
かくて工事が始まらないまま、南アルプスの山なみは11年目の冬を迎える。