ベテラン議員が明かす「裏金作り」の理由 特捜部の標的となる三人の大物議員の名前は?
個別の議員は立件できる?
今後の捜査の見通しについて、元東京地検検事の落合洋司弁護士は、
「特捜部による過去の政治資金規正法違反事案に照らせば、違反額は最低でも5千万円前後。立件の基準額は基本的に1億円以上です。派閥の収支の話は“幹(みき)”の話なので、入りと出で合計の不記載額が1億、2億と今後、膨らむ可能性があります。ですが、各議員の不記載額は“枝”の話。個別の議員の不記載については立件の基準額に満たない可能性があります」
本丸はあくまで、派閥側の不記載であるとの見立てだ。もっとも派閥の会計責任者(事務局長)のみならず、現役事務総長・経験者まで立件するためのハードルは高く、
「派閥の事務局長と共に、議員である事務総長を政治資金規正法違反の共謀共同正犯に問うためには、単に事務局長からキックバックや不記載の話を聞いて知っていた、というだけでは不十分。派閥事務局の報告をその議員が逐一把握していたり、事務局長にノルマ額を具体的に指示したりするなど、派閥のお金の管理に深く関与している必要があります」
「派閥幹部の罪を問うのは難しい」
04年に東京地検特捜部の検事として、日歯連闇献金事件を捜査した経験を持つ、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士にも話を聞いた。
「私自身が主任検事として担当した日歯連の闇献金事件では、最終的に元内閣官房長官で、平成研究会(当時橋本派)の会長代理だった村岡兼造さんを起訴しました。平成研の幹部たちが、日本歯科医師会から小切手で受領した1億円を不記載にするかどうかの会議を行っており、議員側の責任を明確にできたのです」
では、今回のケースはどうか。
「清和会の会計責任者が議員から不記載に関して指示があったと供述したり、そうした指示のメモがあったりすれば政治家の関与も浮き彫りになる。逆にそれがなければ厳しい。キックバックの不記載が慣習化しており、暗黙の了解があったという程度では事務総長など派閥幹部の罪を問うのは難しいのではないでしょうか」
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