投げる哲学者・今永昇太のメジャー入り戦略 代理人は“大谷人気”を使って元巨人投手をMLBに復帰させた辣腕

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今永についている、辣腕代理人

 フリーエージェント選手との入団交渉も行われるMLBウインターミーティングが12月7日(現地時間)に終了した。大谷翔平(29)がドジャース入りを表明したのを受けて、メジャーリーグ各球団の関心は山本由伸と「WBC決勝戦の勝利投手」として知られる横浜DeNAベイスターズ今永昇太(30)に移りつつある。

「米国内でも今永に期待する声は早くから出ていました。11月になると、スポーツ専門誌や野球専門のネットチャンネルなどがFA選手のランキング表を作りますが、今永は10社平均で17位。しかし、スポーツイラストレイテッド誌、ジ・アスレチックでは10傑に入っていました」(米国人ライター)

 予想では契約期間は4~5年、総額5200~8800万ドル(約78億円~132億円)の契約になると言われていたが、ウインターミーティング中にまとまらなかったことで、「提示額は少し上がるようだ」との声も出始めている。

「ウインターミーティング中は大谷に注目が集まり、次に注目されたのは山本由伸(25)でした。投手の獲得を目指す球団はたくさんありましたが、たとえば、山本の獲得に失敗した球団は『今永がまだ残っている』と分かれば必死になります。まして、貴重な左の先発投手ですからね。今永の代理人はウインターミーティング中に決めるつもりはなかったということでしょう」(現地記者)

 今永がポスティングシステムの申請手続きを行ったのは11月28日だった。山本より、ちょうど一週間遅い。同制度を使って米球界移籍を目指す選手に許された期間は45日間なので、24年1月12日午前7時まで、交渉が可能だ。

 仮に山本の入団交渉が長期化し、「年越し」となった場合、米国では年末のクリスマス休暇(一般的に12月20日前後から翌年1月1日まで)に入る。山本の交渉期限は1月5日午前7時までなので、一週間遅れて手続きに入った今永には時間的余裕もある。

 今永の代理人は、米・大手広告代理店グループIPG傘下のオクタゴン・ワールドワイドに所属するアラン・ニーロ氏だ。

マイコラスをMLBに戻した

 ニーロ氏といえば、かつては福留孝介氏(2007年)や、ソフトバンク・和田毅のメジャー挑戦(2011年)にも携わってきたベテランである。しかし、「日本球界通」として認知されるようになったのは、17年オフと少し遅かった。

「巨人に在籍していたマイルズ・マイコラス(35)のMLB帰還をサポートしたんです。その後、マイコラスがカージナルスで活躍したのも大きいですが、ニーロ氏は彼の代理人として、当時も『大谷人気』を逆手に取ってアピールしていました。大谷を視察するために日本に通っていたMLBのスカウトに、ニーロ氏は『マイコラスもぜひ見てください。日本で予想される先発日は……』といった案内文を送っていました」(前出・米国人ライター)

 マイコラスのMLB帰還と大谷の米球界挑戦は、奇しくも同じ2018年である。今回、偶然にも大谷のフリーエージェントと自身が代理人となった今永の米交渉が重なった。今回は、交渉の時期をあえて少し遅らせるなど、“大谷人気を知り尽くした策士”とも言えそうだ。

 もっとも、今永の実力については、今春のWBC決勝戦での好投で、証明済み。「左の先発投手」はどの球団も欲しい。「山本=高額年俸」ということで最初から今永一本に絞って交渉してくる球団もありそうだが、こんな指摘も出ている。

「WBC期間中と、23年シーズンの今永の投球フォームが微妙に違っているという声があるんです。おそらく彼は、米国の固いマウンドに合わせて、WBC中だけ異なる投球フォームで投げていたんでしょう。MLB各球団は今永自身の投球論や野球論も知りたがっています」(前出・現地記者)

 そういえば、今永には「投げる哲学者」という異名がある。メジャーリーグ挑戦を決意した理由の一つに「生き方を変えるため」との考えがあり、日本のメディアに渡米後のことを聞かれても、

「やったことのないことに対して自信を持つタイプではないので、自信はないわけではなくて、まだ持つ必要はないと思っています。しかし、不安は正直あります。野球以外にも生活面だったりとか自分が自分らしくいられるかとか」

 と、答えている。言葉を選びながら話す口ぶりに「オトナの投手」というイメージを抱くファンも多かったが、交渉に時間を掛けなければならない事情があるという。

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