中国「ゼロコロナ解除」から1年、帰国した日本人は皆「数年前までの自信満々の雰囲気はどこへ」と…数々の統計で浮かぶ苦境
「中国政府も経済の悪化を認識している」と市場
中国経済に対する海外の見方も厳しくなっている。
米大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは12月5日、中国の信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。地方政府や国有企業の過度な負債、不動産市場の低迷が中国経済を脅かしているというのがその理由だ。
中国政府は格付け機関の評価に攻撃的な発言を行うことが多かったが、今回の反応は抑制的だった。市場では「中国政府も経済の悪化を認識している」との声が上がっている。
習近平指導部はようやく重い腰を上げようとしている。
中国共産党中央政治局は12月8日、景気の安定化に向けた取り組みを強める考えを示した。財政政策を強化する方針が示されたが、気になるのは、中長期の主要な経済政策の方針を決定するとされる第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)の日程が示されなかったことだ。
不動産不況という目下の大問題についての方針が指導部の間でいまだに定まっていないからではないかとの不安が頭をよぎる。
あまりに大きいゼロコロナ政策の傷跡
約3年間続いたゼロコロナ政策が解除されてから、12月7日で1年が経った。
1年前は「これで経済はV字回復する」との期待が大いに高まったが、ゼロコロナ政策の傷跡はあまりに大きいと言わざるを得ない。
12月3日付英フィナンシャル・タイムズは、借金の返済ができず中国当局のブラックリストに載った人の数が、2020年初期の約570万人から大幅に増加し、過去最高の約854万人となったことを報じた。18歳から59歳の人たちが大多数を占めていることから、「景気回復の大きな足かせになる可能性が高い」という。
今年の出生数が900万人を割り込むなど、急速に進む少子高齢化も暗い影を投げかけている。
歯止めがかからない少子化により、中国各地では産婦人科や幼稚園などが相次いで閉鎖されているとの噂が後を絶たない。メンタルをやられている若者も多く、中国のうつ病患者の3割は18歳以下が占めるという(11月20日・10月13日付Record China)。
数年前までの「自信満々の中国」はどこに
一方、農村部では、高齢者の半数超が独居または夫婦のみで生活しており、日本と同様「老老介護」が当たり前になりつつある(11月6日付東洋経済オンライン)。
認知症患者は既に1500万人に上ると言われている(12月3日付東京新聞)。
最近、中国を訪問した日本人から「数年前までの自信満々の雰囲気はどこに行ってしまったのか」との感想を聞くことが多くなった。
中国社会から活気が消えている。これは、そのうち中国にも長い「失われた時代」が到来することの証左なのではないだろうか。
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