「まるで迷路」「準備中の店ばかり」 麻布台ヒルズ「行ってガッカリ」の裏事情

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未だ準備中の店が多い

 もともと麻布台の地形は起伏に富み、郵便局などがあった高台の地区と、下町情緒あふれる住宅街だった低地をまとめて再開発したゆえ、新たに誕生した各々の建物出入口には高低差がある。

「芝生のある広場から高層タワーの1階に入ったと思ったら、地下1階だと表示してあって混乱します。自分のいる場所が把握しづらく錯覚を起こしやすいし、デザイン優先なのかフロアの案内板が通路の高い所ではなく、多くが壁面の低い位置に掲げられていて見つけづらかった」(40代男性会社員)

 そんな迷える人たちの命綱であるフロアガイドの評判も芳しくない。

「デジタル画面で見やすいと思いきや、インバウンドへの配慮か約3秒おきに日本語の表記が英語へ切り替わるので、探しにくい」(20代女性会社員)

 さらに来訪者たちをガッカリさせているのは、多くの商業施設が未だ“準備中”であること。「レジデンスB」と呼ばれる高層タワーの建設が、折からの建設資材高騰と人手不足などで遅れているのと同様、約150あるテナントのうち、96店舗しか開店していない。セレブ御用達の高級食料品店「明治屋」など31の専門店が集まり、生鮮食品や総菜などを販売する「麻布台ヒルズマーケット」でさえ、来年1月下旬にオープン予定という体たらくなのだ。

住民も「ランチとか買い物をちゃんとしたことがない」

 麻布台ヒルズのガーデンプラザレジデンスの住民である高齢女性に聞くと、

「この辺りに住んでいた地権者で、11月に引っ越してきたんだけど、オープンしていない店が多くてね。ランチとか買い物もちゃんとしたことないんだよね」

 区内に住む40代女性も、

「中庭で目立つのはエルメスのオレンジ色のラッピングを施された巨大な建物ですが、近づいて見ると来年2月開店と書かれていました。ディオールとかブルガリといったブランド店も準備中。テレビを見て麻布台ヒルズがオープンしたと思って来たのに、かなりの数の店が閉じたままで、中途半端というか肩透かしをくらった気分ですね」

 多くのメディアが「東京の新名所」としてもてはやす中、日経新聞がメインスポンサーを務める「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)では、麻布台ヒルズ開業日の放送で、森ビル社長の辻慎吾氏(63)に密着取材。開業までの舞台裏を放映したが、この内容が現場で物議を醸しているのだ。

 件の番組では、麻布台ヒルズの3分の1が緑化されていると褒めたたえ、その一部に「果樹園」があると紹介。辻社長がだいだい色に実ったミカンを口にする場面で、〈なっているミカンは誰でも採っていい〉とのナレーションが流れた。

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