「大奥 season2」最終回 原作者が“男女逆転“という設定にした本当の狙い
時代劇は美しい人間を描きやすい
差別についても考えるヒントが込められた。座敷牢に入れられた親子の過去が正当であると思った視聴者はいないはず。11回から13回まで登場した青沼(村雨辰剛・35)についてもそう。
青沼は日本人とオランダ人の間に生まれた混血であるため、幼いころから不当な差別を受けてきたが、誠実で優秀な蘭学者だった。青沼への差別も正しいと思った人はいないはずだ。
青沼は若い男子のみ罹る伝染病「赤面疱瘡」の研究を大奥で始める。この病のため、男子の数は女子の4分の1になってしまった。男女逆転が起きた理由である。しかし、青沼と弟子らの尽力によって、予防接種「人痘接種」が開発され、この病は防げるようになった。
ところが、人痘接種による不測の事故が起こり、老中・松平定信(安達祐実・42)の甥が死んでしまう。この責任を押し付けられた青沼は斬首の刑となる。人痘接種もたちまち禁じられた。
斬首の直前、青沼は弟子たちに向かって叫ぶ。泣きごとや恨み節ではなかった。
「いつか必ず世が再び人痘を求めるときが来ます! その時は皆さん、よろしくお願いします!」
弟子たちは泣いたが、青沼自身はかすかに笑った。差別がない場で、弟子たちと世のための研究に打ち込めたことが満足だったのだ。時代劇は美しい人間を描きやすい。青沼は好例だ。
男と女とは何なのか?
醜い人間の極例は、仲間由紀恵が演じた幕府の最高権力者・一橋治済である。治済は邪魔者や気に入らない人間を片っ端から殺した。肉親にも手を掛けた。罪の意識は欠片もなかった。
人間に醜い部分もあるのは紛れもない事実だが、治済のような人物が現代劇に登場したら、ホラーになってしまう。観る側が引く。だからこそ治済も、時代劇だから真実味が出た。また、醜い治済がいたから、美しい人間たちが際立った。
結末はどうなるのか。そのカギは第20回の親子が声をかすれさせながら訴えた言葉にあるのではないか。
「徳川やとか、この国とか、そんなんどうでもよくない? そんなん、争うことが好きな腐れ男どもにやらせて、私ら綺麗なもん着て、お茶飲んで、カステラ食べてたら、それでようない?」(親子)
青沼のお陰で、赤面疱瘡で死ぬ男子は激減した。その分、長州などの反乱や権力闘争があちこちで起こるようになった。
男と女とは何なのか? 面白く観せながら、同時に最後まで考えさせてくれそうだ。
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