“裏金派閥パーティー”の元凶は小選挙区制だった…自民党ご意見番は「政党交付金の制度もおかしい。まず党、次に派閥がピンハネ、最後に…」
政治資金の枯渇
「私は政党交付金制度について最後まで強く反対しました。有権者には、自民党の支持者もいれば共産党の支持者もいます。ところが、課税は一緒くたですから、皆さんの税金はごちゃ混ぜになって政治家に届けられる。これはおかしいと言ったんです。共産党を支持する有権者は、自分の税金が自民党の議員に渡されるのは嫌でしょう。しかも、交付が始まると、まずは党がピンハネし、次に派閥がピンハネし、最後にようやく議員に渡されるわけです。にもかかわらず、たちまち議員だけでなく派閥も政治資金に困るようになりました。それを補填するために、パーティーが盛んになったのです」(同・深谷氏)
中選挙区制では1つの選挙区から複数の当選者が出る。そのため自民党も社会党も複数の候補者を擁立した。特に自民党の場合は、同じ選挙区で「田中派と福田派の議員が激突」することも珍しくなく、議員の帰属意識は党ではなく派閥にあった。
「党より派閥ですから、そのトップともなれば自分の派閥を運営するための資金も自分で調達するわけです。盆や暮れには、“子分”である所属議員に餅代といった名目で政治資金を渡しました。ところが、小選挙区制になると、誰もが資金の確保に汲々とするようになりました。その結果、各派閥は、料理や酒を少しでも削って利益率を上げたパーティーを開き、ノルマを課して“子分”にチケットを売らせる時代が来たのです」(同・深谷氏)
記載の必要性
政治資金が調達できなくなったのなら、“清廉潔白”な政治家を目指せばよい。だが、小選挙区制になって政治家は劣化してしまったという。
「中選挙区制は候補者同士、つまり人と人との戦いです。自民党の新人議員が中選挙区制で立候補する場合、まずは自民党のライバル議員と戦うことになります。出馬前から政策を練り、支援者と意思疎通を密にし、勉強を重ねることで鍛えられました。一方、小選挙区制は党と党の戦いです。自民党の公認さえ得られれば勝てる選挙区もあります。そのため政治家として精進する必要性は乏しくなります。閣僚の不祥事が起きると『なぜ首相はあんな議員を抜擢したのか』という疑問の声が上がりますが、あれは順番が逆です。自民党でもそういうレベルの議員が増えており、そうした議員を起用せざるを得ないというのが実情です」(同・深谷氏)
こうして深谷氏の指摘に耳を傾けると、政治資金パーティーの問題は根が深いことに気づく。確かにパーティーは小選挙区制下では必然だったかもしれない。とはいえ、そこにはいつの間にか“錬金術”の要素が加わっていた。どこの派閥でも長期間、公然と裏金作りに励んできたのだ。
「私は政治資金パーティー自体を批判しているわけではありません。裏金が問題なのです。得た収益を堂々と政治資金として記載すればいいだけの話です。そもそもパーティー券は1枚数万円くらいですし、年に何回も開かれません。やれキックバックだ、裏金だと言っても、多くの議員にとってはそれほど大きな額ではないはずです。だからこそ余計に記載しなければならなかったと思います」(同・深谷氏)
[2/3ページ]