安倍派座長の驚きの「公開自白」で特捜部はビックリしつつも捜査を一気に進めることに
お金の面で報告を受けていなかった
一方、最大派閥の安倍派では、10人以上の所属議員が派閥のパーティー券をノルマ以上に売った議員に販売収入をキックバックさせて裏金化していた疑いのあることが判明。すでに特捜部の聴取を受けた安倍派の会計担当職員は、「収入の一部を議員側に還流させていたことを事務総長に報告した」と説明していることが報じられた。
「事務総長は表向き人事のみに関与するとされてきただけに、特捜部から説明を求められることでしょう。お金の面で報告を受けていなかったはずはなさそうですが」(同)
特捜部が立件を視野に入れる政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)罪の公訴時効は5年。2018年以降に安倍派の事務総長を務めたのは、下村博文元文科相、松野博文官房長官、西村経産相、高木毅国会対策委員長だ。現職の主要閣僚、党幹部が3人含まれていることがポイントである。
「それこそ岸田政権が瓦解しかねない事件だけに、甲斐総長が慎重になるのもわからなくはないですね。検察官も国家公務員ですから」(同)
転機が訪れた
そこに転機が訪れたのが、安倍派トップの「自白」だった。
安倍派の塩谷立座長が11月30日、記者団に対していわゆるキックバックの慣習について触れ、あっさりとこれを認めたのである。その5時間後、一転して撤回して全否定したのだが……。
「最初の“あったことはあったと思う”との発言でかなりの関係者がズッコけたとされています(笑)。公開自白に等しいわけですからね。その直後からすぐに撤回すべしと周辺から言われていたのですが、結局5時間もかかってしまった。しかも、キックバックにも種類があって、訴追外のものもあるのに“キックバックは全て存在しない”と言ったので、それもまた物議を醸しました。塩谷氏のその後の反応を見ていると、あまり細かなことを知らないまま発言してしまったように見受けられました」
と、政治部デスク。一方で、この発言が捜査側に大きなインパクトを与えることになった。
「撤回したとはいえ、キックバックを一時的に認めてしまった以上、放置するわけにも行かず、甲斐総長も本格的な捜査にゴーサインを出さざるを得なくなったようです」(前出・社会部デスク)
捜査を進めたい現場側からすれば、敵チームがなぜかわざわざ絶好のパスを出して得点のチャンスを与えてくれたようなものだったのである。
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