「もうバブリーダンスは踊らない!」 4年ぶりに「職場の忘年会」復活も“余興の出し物”が消えた理由

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こんなご時世だから

 幸いなことにこれら努力のお陰でバブリーダンスは大ウケしたようだが、とてもじゃないけれど労力と準備の大変さに見合うものとは思えなかったそうだ。田中さんは2020年も引き続き若手として出し物・芸をするよう上司から言われ、憂鬱な気持ちになっていた。そんな時にやってきたのが新型コロナウイルス。1月に国内発症第一例が報告され、2月に入るとクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で集団クラスターが発生。学校の一斉休校が始まり、3月以降は「ステイホーム」「3密回避」「おうち時間」が叫ばれるようになり、自粛ムードが高まっていく

 小池百合子・東京都知事は3月末に都が管理する人気花見スポットの上野公園、井の頭公園、代々木公園の園内の一部を立ち入り禁止にすると発表。花見の自粛をお願いし、「桜は来年もきっと咲きます。来年の桜も楽しみにとっておいていただきたい」と述べた。

 そして、4月には埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県で緊急事態宣言が発令された。そこから先は帰省の自粛、飲酒の時短、会食の人数制限などすっかり宴会ムードは消えて行った。飲み会をすることは悪事のように捉えられ、営業を続ける店には嫌がらせの貼り紙が貼られるなどした。

 かくして当然この年の忘年会など大っぴらにやることはできなかったし、リモートワークが定着している会社の場合はもはや同僚と合わないことが「ニューノーマル」になっていた。当時の流行り言葉は「コロナが終息したら忘年会はやりましょう」「こんなご時世だから忘年会はやめましょう」というものだった。

こちらの方がいい

 これが3年間も続いたため、すっかり出し物・芸が好きな上司達も「若手はバブリーダンスを踊れ」などと言えなくなった。田中さんはこの風潮を好ましく思っているし、同期も皆、ホッとしているという。

「コロナになって以来、会社でも無駄なことはカットする動きが出てきました。毎日の朝礼も今はやっていませんし、忘年会の芸もそう。私はこちらの方がいいです」

 しかしながら皮肉なのは2021年3月23日、当時飲食店は21時までの時短営業を東京都から求められていたが、厚労省職員23人が送別会をしていたことが発覚。その内十数人は23時50分まで店に滞在。しかも、予め23時まで開いている店を予約するという周到さだった。主催した老健局老人保健課の課長は減給1ヶ月(10分の1)の懲戒処分を受け、大臣官房に異動させられた。感染対策の陣頭指揮を執るはずの厚労相職員が何をやっているのか……と呆れられた騒動だった。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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