「妻の命の値段は370万円…」 殺人事件「被害者遺族」が困窮する国・ニッポン、海外との違いは?
「私や妻のように生きる気力を失う人も」
市川さんは体重が10キロ落ちた。事件発生から9カ月がたって支給された給付金額は杏菜さん、直人さんの二人分を合わせて約680万円。杏菜さんは飲食店で働いていたが、新型コロナで休職中。直人さんも高校生で収入がなかったため、これが算定に反映されたとみられる。
「額を聞いた時は正直、たったこれだけかと思いました。お金が全てではありませんが、子どもを殺され、傷ついた心を癒やすには時間が必要です。仕事をしながら立ち直る人もいるかもしれませんが、私や妻のように生きる気力を失った人もいる。そういう遺族の生活を再建するためには、見舞金という考え方ではなく、もっと長期的な支援が必要ではないでしょうか」
市川さんは現在、給付金を取り崩しながら、妻に寄り添って人生を立て直そうとしている。だが、その給付金も底が見えてきた。
「仕事を早く再開したいけど妻のこともありますし……。自宅の片付けもしないといけない。でもめどが立たないんです」
しかも賠償請求できる相手はもうこの世にいない。事件の被害者遺族でありながら、「命の値段」を勝手にはじき出された上に、住居探しで行政に見放され、経済的困窮に陥るという容赦ない現実。先進国とされる日本で、未だに「殺され損」がまかり通っている。