「妻の命の値段は370万円…」  殺人事件「被害者遺族」が困窮する国・ニッポン、海外との違いは?

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 給付金額を警察から聞かされた遺族の中には、「命の値段」が低く見積もられたと嘆く人もいる。

 2021年12月に大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4階の心療内科クリニックが放火された事件。後に死亡した犯人の他に、院長や患者ら26人が犠牲になったが、その多くは職場復帰を目指して療養中の人たちだった。そのため収入がなく、給付金額は低かった。失望した遺族らは、給付金額を拡充するよう岸田文雄首相に要請する文書を送った。

 政府は今年8月、有識者会議を開き、給付金額を大幅に引き上げる方針を決定した。来年5月までには具対策を取りまとめる。

「出来損ないの法律」

 犯罪被害給付制度は、1974年8月に発生した三菱重工ビル爆破事件を契機に国会やマスコミで必要性の議論が高まり、1981年に導入された。以降、支給対象の拡大や支給額の引き上げを中心とした見直しは何度も行われてきた。それでも現行の遺族給付金の平均額約743万円は、交通事故の自賠責保険で支給される平均額約2500万円より低く、高羽さんはこんな本音も漏らす。

「殺人事件は殺意があって人の命が失われる。にもかかわらず、故意ではない交通事故の自賠責保険でそれだけ支給されるのであれば、殺人の被害者遺族はもっともらってもいいのでは」

 自賠責保険は、民間の保険会社が支給するため、運転手による掛け金で成り立っている。ゆえに税金を財源とした犯罪被害給付制度と性格は異なるが、高羽さんと同じ気持ちを持つ事件の遺族は多い。

 被害者学を専門とする常磐大学元学長の諸澤英道氏は、制度の基になった犯罪被害者等給付金支給法は「出来損ないの法律だ」と批判した上で、その理由をこう説明する。

「法案が国会で審議された際、野党などから『本来は加害者が賠償すべきなのに、なぜ国が支給しなければならないのか』という反対意見が挙がりました。そのためか法的性格が『見舞金』と位置付けられました。要するに一時金。そこが根本的な問題です」

 一時的な支払いで済ませようとして、被害者や遺族の生活再建に向けた長期的な視点が欠けている、というのだ。

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