「妻の命の値段は370万円…」  殺人事件「被害者遺族」が困窮する国・ニッポン、海外との違いは?

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「無人のアパート」を20年以上借り続けている理由

 1999年11月13日正午ごろ、高羽さんの妻、奈美子さん(32)=当時=が何者かに刺されて死亡した。現場は高羽さん一家三人が住んでいた名古屋市西区のアパートで、奈美子さんはリビング入り口のところでうつぶせに倒れ、台所の食卓では、当時2歳の息子、航平さん(26)がベビーチェアに座っておもちゃをいじっていた。犯人とは目と鼻の先。にもかかわらずけがもなく無事だった。高羽さんが当時を思い返す。

「結婚して4年目でした。奈美子の夢だった赤い車を買い、納車されたばかり。家族でディズニーランドへも行き、人生で一番幸せな時に事件が起きたのです」

 目撃情報などによると、犯人は女性で、年齢は40~50歳(現在60~70歳)。身長160センチぐらい。

 事件後、市内の実家へ移った高羽さんは、心が折れそうになりながらも不動産の仕事に復帰し、両親とともに航平さんを育て上げた。現場となったアパートは解約せず、家賃を現在に至るまで払い続けている。その額は2128万円に上る。なぜ「無人のアパート」を20年以上も借り続けているのか。それは、奈美子さんともみ合いになった時に手をけがした犯人の血痕が、玄関のたたきに残っているからだ。

「家賃は年間60万円かかりますので、年金生活者にとっては大変なんです。もう片付けたいとは思っていますが、犯人のDNAが残された、日本で唯一の未解決事件の現場かもしれませんので」

 家族の誰かが殺されると、残された遺族には悲しみや犯人への憎悪といった精神的苦痛に加え、経済的負担ものしかかる。それでもいや応なく人生が続いていく被害者遺族は、国からどこまでの支援を受けられるのか。

「たまたま働いていない期間を対象に算定するのは不公平」

 その一つが、犯罪被害給付制度である。この制度に基づいて遺族に支給される額は、発生前の収入や家族構成によって算定されるため、320万円~2964万円と幅がある。2022年度の平均支給額は743万円だった。

 高羽さんが支給された20年以上前の平均額はもっと少なく、現在の水準とは比較できない。それでも奈美子さんは収入がない主婦だから、低く抑えられたのではと、高羽さんは考える。

「たまたま働いていない期間を対象に算定するのは不公平ですよね。その時は子育てに専念していても、子どもが大きくなったら働きたいと思う女性もいるだろうし。他の事件の給付金額を耳にした時に、奈美子が仕事をしていればもう少しもらえたのかなとは思いました」

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