安楽智大だけじゃない!「古田2世」も病院送りに…プロ野球で過去に起きた“パワハラ騒動”

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菊池雄星への“暴行”事件

 一方、選手への暴力行為で解雇されたのが、2010年の西武・大久保博元2軍打撃コーチである。

 自主参加のアーリーワーク(早朝練習)を行うメンバーたちで「アーリー会」を結成した大久保コーチは、遅刻1分につき1000円の罰金を徴収。貯まったお金は、メンバー数人で集まる食事会で還元されていた。

 だが、体罰が当たり前の時代を体験し、自ら嫌われ役になって選手を育てようとする大久保コーチのやり方は、若い世代には受け入れられなかった。10万円を超える罰金を取られた選手もいたことなどから、不満の声が上がり、6月下旬、選手会を通じて「チームの統制を害する言動があった」と球団に報告された。

 球団から罰金をやめるよう注意された大久保コーチは、噂だけでルーキーの菊池雄星が「チクった」と決めつけ、胸ぐらを掴むなどの暴行を加えた。

 事件を知った球団は7月22日、「コーチとして不適切な行為があった」として、大久保コーチを解任し、暴行の事実を確認すると、同29日付で解雇した。

 当時の大久保氏は「自分の指導は正しい」と思い込んでいたそうだが、その後、球団を相手に地位保全などを求める訴訟を起こし、裁判が進むにつれて自分に非があることに気づいたという。

 そして、2016年2月、大久保氏解雇の際に「僕の立場としては、選手も守らないといけないし、コーチも守らないといけない。デーブを守れなかったことに関して、すごく自分を情けなく思う」と複雑な胸中をのぞかせた渡辺久信SD(2010年は監督)が仲介する形で、菊池と再会した大久保氏は「オレみたいな大人が苦しめて悪かった」と謝罪。7年目の和解が成立した。

「やっぱり野球でしか人生は良くならない」

 まだファンの記憶に新しいのが、2021年に日本ハム時代の中田翔が起こした後輩投手への暴行事件である。

 同年、中田は開幕から打撃不振が続き、前半戦終了時点で打率.197、4本塁打に終わっていた。思うような結果が出せず、イライラが高じるなか、8月4日に事件が起きる。

 東京五輪開催中の中断時期に行われたDeNAとのエキシビジョンマッチの試合前、後輩投手と話していた中田が突然腹を立て、顔面を殴りつけた。2人はふだん食事をともにするなど、仲が良かったが、最近、後輩投手が距離を置きはじめたことに中田が不満を爆発させたようだ。

 中田はその日のうちに謝罪し、後輩投手も「おおごとにしないでほしい」と望んだが、事態を重く見た球団側は8月11日、「暴力は決して許されない」として、中田を無期限出場停止処分にした。

 その後、「人は間違いを起こしたときに、ちゃんと謝って、それで道をつくってもらえるならば、やっぱり野球でしか人生は良くならない」と考えた栗山英樹監督が巨人・原辰徳監督に相談し、8月20日、巨人へのトレードが決まった。

 巨人で3年間プレーした中田は「(坂本)勇人さんだけでなく、いろんな方からすごくいい勉強をさせてもらいました」と感謝の言葉を残し、来季は中日でプレーする。

 冒頭で触れた安楽がこれからどんな道を歩むことになるか、現時点ではまだわからないが、本人が改心したうえで、野球の道をつくってくれる恩人とめぐり合えるかどうかにかかっているはずだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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