病んだ妻を尻目に 我が家の食卓にやって来る不倫相手…62歳夫が彼女を止められない特殊事情とは

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はっきりさせたときの反応が怖い

 どちらが好きかなんて考えたことはない。ふたりの女性が仲良くしているのがいいことなのか悪いことなのかもわからなかった。ただ、何かが自分を追いつめてきているような、不穏な空気だけを感じていたと友一朗さんは言う。

「そんなことが何度かあって、貴子は秋恵を頼るようになり、秋恵は社内でも少しずつ態度が変わっていった。社長と専務に信頼されているということが彼女に何らかの変化をもたらしたんでしょうか。大きく変わったわけではないんだけど、何かあるとパッと僕の顔を見たりする。なんというのか、自分と僕の関係を周囲に知られてもかまわないと思っているのかもしれないと感じたんです。ひょっとしたら僕の思い過ごしかもしれないけど……」

 ふたりで秋恵さんの家にいるとき、ふと彼女がつぶやいた。「奥さんって、まったく疑ってないのね」と。社長が浮気していたらどうするかと、秋恵さんは貴子さんに尋ねたのだという。貴子さんは「あり得ない」と言った上で、「そんなことができる人じゃない」とつけ加えたのだという。

「秋恵は、社長は見くびられてると言っていましたが、そうやって煽るのはやめてほしいと僕は言いました。すると秋恵は『私は奥さんの気持ちが少しでも紛れればいいと思っているだけ』と。なんだか僕が悪いことを言ってしまったようで、すぐに謝ったけど、やはりおかしな関係になっているのは確かですよね。先日は業界内の集まりでも、『なんかお盛んだという噂が出てますよ』と言われたんです。やっぱり秋恵が何か振りまいているのかもしれない……」

 それによって傷つくのは貴子さんだ。貴子さんは今ではすっかり体調も回復し、毎日出社している。だが貴子さんを見る秋恵さんの目が少し険しくなっているような気がすると友一朗さんは小声で言った。

「はっきりさせたときの妻と子どもの反応が怖いんです。秋恵がどういう態度をとるのかもわからない。ずるずると関係をもっているのはよくないと思うけど、断ち切るにはあまりに近くにいすぎる。彼女から連絡があって僕が今日は会えないとメッセージを送ると、彼女は『ふうん、わかった』というような返事を送ってくるんですよ。いつか『バラしてやる』と言われそうで……。せっかくよくなった貴子がまた調子を崩したらと思うと、なかなかことをはっきりさせることができないんです」

 いつかは何かが変わるのではないかと思っていたが、この5年間、状況は変わっていない。変わるのを待つのか、自ら変えるべきなのか。そして年齢的にも、そろそろ自分の進退や会社の将来を具体的に考える時期になっているのではないかとも彼は言った。ことを荒立てずに、すべてをうまくおさめることができるのだろうか。

「それは……むずかしいでしょうね」と彼は低い声で言った。

前編【僕の貯金に手をつけた母、その虚し過ぎる使い道… アラ還社長が会社の年下女性に「人並の幸せ」を脅かされるまで】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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