僕の貯金に手をつけた母、その虚し過ぎる使い道… アラ還社長が会社の年下女性に「人並の幸せ」を脅かされるまで

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「人並みの幸せ」に酔った

 結婚して3年目、30歳のときに待望の第一子が生まれた。女の子だった。こんな小さな生き物をどうやって守ればいいのか、彼は途方に暮れたような気持ちになった。その3年後、男の子が生まれた。義両親の助けもあって中古ながらマンションも購入した。「人並みの幸せ」に酔った。妻は家庭をうまくマネージメントしてくれた。

「今の時代とは少し違っていて、僕は外で稼ぎ、妻は家でがんばる。そんな分業が自然とできていました。もちろん、妻が大変なときは手伝いましたよ。でもそう、あくまで手伝うという感じ。ただ、娘が幼稚園のときに友だちのおとうさんの作ったオムライスがおいしかったんだよと言うのを聞いて、僕もやってみようと思ったんです。妻に相談したら、料理の本を見せてくれた。その通りにやったんですが、チキンライスは味がないし、卵は固くなっちゃうし。料理っておもしろいなと思いました」

 週に一度、一年間みっちり料理教室に通った。バリバリ仕事をしながら一度も休まなかったというから彼の勤勉さがわかろうというものだ。

「うちの仕事は土日が休みというわけではないんです。だから料理教室も曜日が決まっていると通えない。週に一度、いつ来てもいいという教室に行きました。習って食べて帰って、後日、同じものを家で作って復習しました。妻にも子どもたちにも好評でしたね、それがうれしくてまた通う。そんな感じだった」

 あのころは楽しかった、いい日々だったと彼はつぶやいた。子どもたちが大きくなると、大人として話ができるのはうれしいけど、関係が変わってきますね。そう言った彼はどこか寂しそうだった。

後編【病んだ妻を尻目に 我が家の食卓にやって来る不倫相手…62歳夫が彼女を止められない特殊事情とは】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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