苦悩の在日ロシア人と、憤怒のウクライナ人 日本で繰り広げられる「もうひとつの戦争」に迫る

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「プラカードを掲げ、写真を撮るだけ」

 こうした反応は彼一人にとどまらない。

「ロシア人たちは、自分の国で政府が何をしているのか知ろうとしない。彼らは(ネット上に)うそが溢れていると言うけれど、今日本にいて、規制もなく何でも調べることができるのに、しようとしない。それに彼らにとって、デモを行うというのは外に出てプラカードを掲げ、写真を撮ること。どうせ何も変わらないと思っているから、参加者からも強い思いが感じられない」

 第2次世界大戦でナチスとソ連に抵抗したウクライナ蜂起軍の赤と黒の旗を肩にかけて募金活動デモに参加したコリ氏(22)=仮名=は、侵攻当初キーウの国立大学でクリミア・タタール語を勉強していた。クリミア半島の少数民族が使用する言語で、今は話者が減っている。言語が消えてほしくないという思いから、大学でクリミア・タタール語を専攻したという。

 コリ氏は侵攻後ポーランド国境へ逃れ、しばらく避難生活を送った。祖国を離れるという決心を下すのは簡単ではなかったが、避難所で出会った日本人ボランティアから日本がウクライナ人を受け入れていると聞き、昨年5月に難民として来日した。

 彼女もまた、ロシア人の活動に異を唱え続けている。

「彼らは謝罪の言葉を一言も発しない」

 冒頭で紹介した「ロシアの日」デモでは、前出のウクライナ人・オレクサンドル氏とコリ氏が、ロシア人らと並んで抗議を続けた。そこに偶然通りかかった2人の若いウクライナ人女性が足を止め、彼らに加わった。

「Peace to Ukraine!」「Stop the war!」コールを上げるロシア人らの前で、ウクライナ人らはロシアを批判するビラを道ゆく人に配り続けた。いわば「カウンターデモ」である。

「ウクライナの平和を求めるデモなんて言うけど、彼らは謝罪の言葉を一言も発しないし、ウクライナの国旗すら見当たらない。こんなの茶番だ」

 そう批判の声を上げながら。

「私はロシア人ですが、領土の拡大は望みません!」

 ロシア人によるこのようなプラカードも、現実に国土を蹂躙されているウクライナ人にとっては、結局は善人の仮面をかぶった姿として映るという。

「あんなの、私は善良なロシア人だとアピールしたいだけ」

 コリ氏は、私にそう語った。

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