苦悩の在日ロシア人と、憤怒のウクライナ人 日本で繰り広げられる「もうひとつの戦争」に迫る

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「デモを行う自由を与えてくださりありがとうございます」

 そんな彼女は、デモへの思いを明かす。

「戦争に反対するロシア人は大勢いる。でも日本のように自由に声を上げるのは難しい。母国の人のためにも私はここでデモに参加し、民主化を願う人々の代弁者となりたい」

 こうしたロシア人が多く集う前出「戦争に反対する在日ロシア人」のデモの頻度は1~2カ月に1度ほど。場所は渋谷駅前で、参加者は1回で10~15人ほどである。

 11月4日のデモでは、参加者のひとりから、

「戦争が長引き、ニュースで取り上げられることも減った。私たちがデモを行うことで『今もウクライナには侵攻による負傷者や犠牲者がたくさんいる』ことを再認識してもらえたら」

 との声が。締めには、

「日本のみなさん、こうした場で私たちの話を聞いてくれたり、デモを行う自由を与えてくださりありがとうございます」

 との話も出た。母国で自由な発言ができなかったロシア人ならではの言葉だ。

「日本で楽しい思い出をつくることに罪悪感」

 一方、在日ウクライナ人もデモを行っている。そのうちのひとつを主催するのは「Stand With Ukraine in Japan」で、ウクライナ侵攻が始まった後立ち上がった運動だ。こちらは毎週日曜日、主に新宿駅前が舞台である。

「ロシアはテロ国家!」

「ウクライナに平和を!」

 一人がマイクで叫ぶと、他の参加者らがシュプレヒコールを上げる。人通りの多い新宿駅南口が、この時間だけ参加者の持つ旗やプラカードで青と黄色のウクライナカラーに染まり、通りかかる人も足を止めてスピーチを聞いたり、募金したりする。参加者の数は20~30人ほど。他にも写真展やワークショップなどを開いたり、ロシア大使館前で抗議を行ったりすることもある。日本人のほか、ベラルーシなど他国出身者の姿や、ウクライナの前線で負傷し、日本で治療やリハビリ中の元兵士が顔を出すこともある。

 当然といえば当然だが、在日ロシア人のデモとの熱量の差は明らかだ。

「母国では今この瞬間にも、ミサイルや空爆におびえる人、そして前線で負傷したり命を落とす人がいる。自分だけが日本で楽しい思い出をつくったりすることに罪悪感がある」

 こう話すのは、ウクライナ出身のオレクサンドル氏(27)だ。彼が日本に来たのは昨年8月。侵攻が始まってから約半年後だった。

 来日してからほぼ毎週デモに参加し、真剣な表情で笑顔ひとつ見せることなく、他の参加者らと並んで声を上げていた。

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