苦悩の在日ロシア人と、憤怒のウクライナ人 日本で繰り広げられる「もうひとつの戦争」に迫る
「もうひとつのウクライナ戦争」
ウクライナ戦争が始まって1年9カ月。泥沼の戦闘が続き両国の争いは長期化。ウクライナ東部では局地戦が繰り返され、今日も多数の人命が失われている。
これに伴って、世界各地で苦境に陥っているのが在外ロシア人たちで、現地社会から冷たい視線を向けられている。一方、郷土を侵略された在外ウクライナ人は、異国の地で国の行く末を案じる。在日ロシア人が約1万700名、ウクライナ人が約4200名いる日本も例外ではないが、時に両者が激突する場面も生じ、「もうひとつのウクライナ戦争」というべき衝突が起きているという。異国に暮らす彼らは、それぞれの祖国、そして敵国にどのような思いを抱いているのか。心情を伺った。
14歳でデモに参加
「プーチンは政治犯を釈放せよ! ロシアに自由を!」
真剣な表情でそう叫ぶのは、冒頭のデモにも参加していた在日ロシア人、マリカ氏(23)である。
モスクワから1500キロほど離れたペルミ地方・ベレズニキ出身の彼女は、実に14歳のときから反プーチンデモに参加してきた。まだ学生だがフリーの記者として働いてもいる。若々しいボーイッシュな見た目で明るい性格の彼女だが、どこの国でも反プーチン政権の活動を積極的に繰り広げるいわば活動家だ。
14歳のとき、母親に「友達と遊びに行く」とうそをついてバスで4時間かけて主都へ行き、デモに参加した。もともとのきっかけは「若者の間で反政権デモがはやっていたから」。プーチン大統領を批判するプラカードを掲げたり、声を上げたりする姿が格好良く見えたそうだ。気が抜けてしまうような理由だが、どの国でもこうした理由で抗議運動に参加する人は少なからずいるだろう。主都のデモでは生まれて初めて「プーチン反対」などと叫ぶ人を見て圧倒されたという。
2018年に進学のためモスクワに引っ越してからは、自らデモを主催することもあった。ロシアでは大勢が一箇所に集まると捕まる危険が高まるため、間隔を空けて通り沿いに参加者が一列に並び、プラカードを持つ人を数分おきに交代するという方法でデモを行うことが多かった。
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