ライバルにもならない? 増える「コンビニ野菜」をスーパー「アキダイ」社長はどう見ているか
やる気のあるコンビニ店員がいると買いたくなる
渡辺:コンビニの生鮮はアキダイに勝てる要素がありませんが、逆に「ここはコンビニがすごい」と感じる部分はありますか?
秋葉:最初に言った緊急購買もそうですが、中食が圧倒的に強いですよね。
渡辺:持ち帰りの弁当などですね。
秋葉:単身者や仕事が忙しくて自炊できない人は、うちよりもコンビニを利用する方がメリットが大きいでしょう。食べたいときに食べることができるし、自炊に比べて生ゴミが少ないのも魅力じゃないですか。あとはスイーツ系かな?
渡辺:秋葉さん、コンビニスイーツ食べるんですか!
秋葉:甘いもの、わりと好きなんですよ。昔に比べて、コンビニのスイーツは劇的に美味しくなりましたよね。町のケーキ屋の方がいいのかもしれないけど、ふと食べたいと思ったとき、ケーキ屋が近くになかったり営業時間外だったりしますから。しかも、ケーキ屋より安いでしょう。家族や社員への差し入れに買うこともあります。
渡辺:ホットスナックはいかがですか?
秋葉:「こちらの商品、揚げたてです!」と元気に言われちゃうと、つい買っちゃいます(笑)。
渡辺:商売人の言動は、同じ商売人に響くんですね。
秋葉:やる気のある店員さんがいると、やはり同業者として応えたくなります。
渡辺:わりとコンビニを利用しているんですね。
秋葉:市場から戻ってくるときや帰宅時のほか、ATMもよく利用します。週5日以上は通ってるんじゃないかな? 出勤時に小腹が空いたとき、手軽に食べられるコンビニおにぎりも重宝します。ただ、添加物があまり好きじゃないからpH調整剤は気になるかな……。
渡辺:日持ちさせないといけませんからね。今ローソンで「冷凍おにぎり」の実験販売が行われています。日持ちを気にする必要がなくなるので、もしかしたら冷凍おにぎりには添加物が入らなくなるかもしれません。
秋葉:冷凍かぁ……時間掛かります?
渡辺:今実験中の商品は、店舗のレンジで45秒、家庭用レンジだと1分半くらいです。
秋葉:朝は慌ただしいから、その45秒すら惜しいかもしれない(笑)。
渡辺:秋葉さん、多忙ですからね。
60歳までには引退して世界旅行したい
渡辺:2023年3月、アキダイがロピア(神奈川県を拠点とする食品スーパー)の傘下に入りましたよね? 意外と言いますか…とにかく驚きました。
秋葉:多くの企業さんからM&Aのお話をいただいていましたが、縁あってロピアのM&Aを受けることにしました。
渡辺:もともと事業継承を考えていたということですか。
秋葉:アキダイは私が一代で築いた企業で、子どもが継ぐ予定もありません。だから、何とかして僕の引退後も従業員たちが安心して働ける環境を整えてあげたかったんです。
渡辺:秋葉さんから「引退」の言葉が出るとは思いませんでした。てっきり「生涯現役」のタイプかと…。
秋葉:目標としてはあと3年くらいで辞めたいんですよ。無責任な形で引退するつもりはありませんが、60歳前後で次のステージに行きたいなと。
渡辺:次のステージとは?
秋葉:いやいや、プライベートな話ですよ。これまで数十年間、連休なんて考えられないような生活を続けていたので、ゆっくり時間をとって日本とか世界とか無期限で旅行してみたいんです。
渡辺:素敵な夢ですが、仕事欲が再燃しそうな気もします。
秋葉:もちろん、これまで培ったノウハウを若い世代に届けようという思いもあります。希望があれば、スーパーや八百屋などにコンサル的なことをしてみたいです。ボランティアに近い感じで、報酬は言い値でいいかな?
渡辺:秋葉さんのノウハウが小規模経営の小売に広がれば、大手スーパーもうかうかしていられないでしょうね。