ライバルにもならない? 増える「コンビニ野菜」をスーパー「アキダイ」社長はどう見ているか

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信頼関係がものを言う市場での買い付け

渡辺:大手スーパーの青果はいかがですか?

秋葉:コンビニに限らず、大手スーパーでも市場から直接買い付けるのは難しいでしょう。複数の仲卸を使っているケースがほとんど。だから、もしもスーパーに良質な生鮮が置かれていたら、それはスーパーの目利き力ではなく「良い仲卸に当たった」というだけの話なんです。

渡辺:スーパー自体は、決して市場に詳しいわけではありませんからね。アキダイは仲卸を使っていないんですか?

秋葉:仲卸を通すのはごく一部だけで、95%くらいは直接市場で買い付けています。

渡辺:どの市場を利用するんですか。

秋葉:所沢、東久留米、国立、板橋の4ヵ所です。

渡辺:日本最大の大田市場は行かないんですね。少し意外です。

秋葉:「来てくれ」と声が掛かることはあるんですけどね。距離の問題もありますし、市場での取引は付き合いの深さも大きく影響しますから。

渡辺:大きな市場でそこそこの付き合いをするよりも、小さな市場で密な付き合いをする方がいい。

秋葉:その通りです。入ってきた青果の量が少ないときは、付き合いが深いところに優先的に売るんですよ。本当に少ないときなんかは、私にだけ売って終了ということもあります。

渡辺:信頼関係が大切な世界です。

秋葉:産地と市場でも似たようなことが起こります。不作のときは、実績のある市場へと優先的に渡り、行き渡らない市場も出てくる。そうなると、手に入らなかった市場は何とかして買い漁ろうと動くため、相場が上がってしまう。こうした事情を知っていることも私の強みだと思います。

渡辺:だからテレビでも引っ張りだこなんですよ。たまに僕も青果についてテレビ局からコメントを求められることがあります。でも、僕の知識レベルだと出荷量が少なかったら「天候不良で……」などの表面的なことしか答えられない。

秋葉:それはそれで、テレビ局が欲しい言葉だと思いますよ。

渡辺:そうは言っても、秋葉さんのように詳しく知っている人がコメントしないと説得力がありません。

秋葉:でも、深い理由まで詳しく話してもオンエアされませんからね(笑)。決してテレビが悪いわけではありませんが。

渡辺:放送尺の都合ですね。

秋葉:そうなんですよね(笑)。たとえば、一言で「高温障害」といっても「この産地では花落が原因で、別の産地では種がまけなかったから」など多岐にわたります。さらに言えば、高温障害が落ち着いたら、各地で種まきのタイミングが重なるため、その後は軒並み価格が下がる……などの説明までできます。

渡辺:すごいなぁ。アキダイの従業員たちも秋葉さんのように生鮮事情に詳しいんですか?

秋葉:売り子たちにも情報を集めるように教育しています。お客様から「キャベツ高くて困っちゃうわね」と言われたら、「なぜ高いのか」と「いつまで高いのか」を答えられないと駄目なんです。ある産地で雹害が起きたら、見た目は虫食いみたいになっちゃうけど、雹害だから問題ないんですよ、と。その分、安く売ってるから、生産地も大変だから買ってあげて下さい……などのセールストークができる。

渡辺:産地の声も届けているんですね。

秋葉:雹害や豪雨などの被害があると。産地から被害状況の画像が送られてきます。それをテレビで伝えてもらうこともあります。

渡辺:本当にすばらしい。お客さんも、秋葉社長やアキダイのファンになるわけですよ。

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