【ゴルフ】「飛ばないボール」採用はアマチュアも対象に… 「ゴルフが生き残るために」浮上するもう一つの制限案
ゴルフ界に衝撃が走ったのは12月6日(米国時間=以下同)のことだった。ゴルフのルールをつかさどるUSGA(全米ゴルフ協会)とR&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)が突然、ボールの飛距離を制限する新たな規定を正式発表した。その内容は今年3月に発表された提言とは大きく異なるものだった。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】
飛距離偏向主義に歯止め
これまでの経緯をざっと振り返ってみる。USGAとR&Aが「飛ばないボール」の提言を発表したのは今年3月13日のことだった。
この提言は、昨今のゴルフ界における飛距離偏重傾向に歯止めをかけることを目指し、ボールの種類を変更して飛距離に制限を設けるというものだった。その理由をUSGAとR&Aは「飛距離ばかりが重視されつつある中で、本来のゴルフの在り方、ゴルフコースの在り方が損なわれつつある」「ゴルファーの飛距離の伸びに対応するためにゴルフコースを伸長することは、いずれは地理的、物理的な限界に直面する」と指摘した。
そして、ゴルフのあるべき姿を思い出し、さまざまな限界に到達してしまう前にボールの飛びを制限する必要性を訴えた。
具体的には現在のボールより飛距離が5%ほど制限される「飛ばないボール」を使用するという内容だったが、対象になるのはプロやトップアマが出場する「エリート・レベルの大会」のみで、一般のアマチュアゴルファーは適用外とされていた。そして、この提言は内外からのフィードバックを募った上で再検討され、正式に了承された場合は2026年から実施されることになっていた。
しかし、ここへ来て事態は大きく変化した。
「飛ばないボール」で受けるダメージ
米ゴルフダイジェスト誌は11月下旬、「USGAとR&Aは、3月の提言段階では対象外としていたアマチュアゴルファーを制限の対象に含め、プロにもアマにも『飛ばないボール』の使用を求めることを検討している」、そしてそのことが「近いうちに発表される」と報じ、米欧の両ツアーやSNSで激論が交わされ始めた。
USGAとR&Aは12月6日、ボールの飛距離制限を「すべてのゴルファー」を対象として実施することを正式発表。米メディアはこの発表をブレイキングニュース扱いで一斉に報じた。正式発表によると、「飛ばないボール」の使用が正式に求められるのは、プロは2028年から、アマチュアは2030年からとされている。
「アマチュアは対象外」とした前言を翻し、一転して制限の対象に加えた理由は、3月から8月までにゴルフ用品メーカーなどから寄せられたフィードバックで「制限対象をプロとアマに分けるのではなく、すべてのゴルファーに統一することが望ましい」という意見が多数を占めたからだとされている。
「飛ばないボール」を使うことで、実際にどの程度「飛ばなくなる」のか?
USGAとR&Aの試算では、米国のPGAツアーや欧州のDPワールドツアーで戦う男子プロは9~11ヤード、LPGA(全米女子プロゴルフ協会)やLET(欧州女子ゴルフツアー)の女子選手なら5~7ヤードほど飛距離が落ちるという。アマチュアが「飛ばないボール」で受けるダメージは、「せいぜい5ヤードかそれ以下」とされている。
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