日大「林真理子理事長」の会見は「中身なし」ではなかった…新聞テレビが報じない「競技スポーツ部に宣戦布告」の覚悟
そこまではまだです
「日大には16学部ありますが、これが別々になりがちで、ひとつになる方法が今まではあまりなかった」
具体的なイメージは私の補足もあるが、例えば従来のアメフト部は、文理学部やスポーツ学部に所属する学生を中心に構成され、全学部の代表とは言い難い存在だった。むしろ、各学部にある同好会で学内大会を行い、学内ナンバーワンを競うスポーツ大会を活発化することで学生間の交流を促し、大学の活性化を図れるのではないか。
私はある大企業の社内スポーツ大会の取材を継続して担当した経験がある。支店対抗のスポーツ大会は、支店間の交流が希薄になりがちな中で、社員間のコミュニケーションを熱くする素晴らしい成果をもたらしていた。だが、こうした理想は、既存の競技スポーツ部にとっては厄介かつ迷惑でしかないだろう。相当な抵抗が予想される。私は「相撲部や野球部、ラグビー部などとはもう事前の協議をされたのですか?」と益子委員長に質問した。すると、「そこまではまだです」との回答だった。
全面戦争
アメフトの廃部で終われば他の部は無傷、とばっちりを受けずに済んだが、競技スポーツ部全体の改革に踏み込まれたら、騒動は全ての部活動に飛び火する。
会見直後に、他の運動部の指導者のひとりに感想を尋ねると、案の定、「むしろあの人(益子委員長)がグチャグチャにしている」と、かなり怒気の強い答えが返ってきた。「廃部ありきで進めたのもあの人です。今後は大学の支援に頼れないので、自分たちでどう自立するか、対応策を練り始めています」
緊張感あふれる声を聞いて、部は部で深刻な状況に直面した現実を知らされた。私は思わず、「まるで全面戦争のようですね」と訊ねると、その指導者ははっきりと言った。「私の中ではもう全面戦争です」
大学側の宣戦布告で、大学と競技スポーツ部の全面対決の様相も案じられる展開になってきた。この日の記者会見は決して、「林理事長のリーダーシップが見えない」「中身がない」と非難されるものではなかった。
「大学とスポーツの関係をどうすべきか」、競技スポーツのあり方を見直すことは、日大改革の中枢にもつながっている。