日大「林真理子理事長」の会見は「中身なし」ではなかった…新聞テレビが報じない「競技スポーツ部に宣戦布告」の覚悟
しっかりと顔を上げ
前回の記者会見の時、林理事長は「スポーツに遠慮があった」と言って失笑を買った。危険タックル問題に端を発し、現職理事長の逮捕にまで発展した一連の騒動も、まさにスポーツの現場から火の手が上がった。しかも、スポーツ組織の裏側で悪しき利権構造が構築され、スポーツ部が日大の大学経営の根幹を腐らせる温床となっていた。にもかかわらず、そこに手をつけず、理事会や評議員会など、上層部の改革から始めた結果、今回もまたアメフト部から火が上がる結果となったのは迂闊と指摘されてもやむを得ないだろう。ここに至って、ようやくだが、競技スポーツ部の権力構造を解体し、OBたちから大学にその主権を移すという決断をした。
「いよいよスポーツの改革に切り込むのか? その覚悟ができたのか?」と、私は林理事長に質問した。すると、ずっと目を伏せることの多かった林理事長がこの時はしっかりと顔を上げ、力強い意志を表明した。この時、林理事長の強い覚悟を感じた。
大麻問題が起きて以降、私立大学の経営に携わる当事者たちにも取材を重ねた。彼らは一様に、「素人には無理」「作家に経営できるわけがない」と一刀両断した。まして予算総額が2700億円を超える巨大大学法人の経営を、未経験者にできるわけがないと。なるほどと納得したが、記者会見の場にいて、果たしてそれがすべてだろうか? と思い直した。私は危険タックル問題以降に取材を始めた者だが、それでも驚くほどの利権構造、魑魅魍魎の人間関係や支配構造を見せつけられた。林理事長は、そうした闇の深さ、自分を陥れんとする勢力と彼らの執念深さにようやく気付き、打ち震えたのではないか。
画期的な出来事
林理事長と個人的な交流はないし、擁護する立場にないが、仮にも長い間、人気作家の地位で活躍し、数々の話題作を送り出してきた方が、こうした現実への嗅覚を持たないわけがない。私を見上げた林理事長の眼差しには、自分を奈落の底に突き落とした競技スポーツ部人脈への怒りと逆襲への覚悟が満ちているように感じた。
昨年夏、請われて理事長に就任した当時は、おっとり刀で、彼女自身は被害者でも当事者でもなかった。火中の栗を拾う役だったが、その認識も甘かったのではないだろうか。しかし、今回は自分が当事者になり、これまで作家として積み上げて来た名声や信用のすべてを崩落させるほどの事態に直面した。このままで終われるはずがない。
日大が文科省に提出した報告書にも明記され、会見で益子委員長が示した競技スポーツ部の新たな方向性は前述のとおり、アメフト部を廃部するにせよ再生するにせよ、今後の日大スポーツ競技部の根本姿勢を問い直すものだ。これが実現できたら日本のスポーツ界に革命が起きるくらい「画期的な出来事」になるとスポーツライターは興奮を抑えきれない。大学は日本一、世界一のスポーツ選手を輩出する強化機関でなく、学業を通して人材を育成する、そのための効果的活動の一つとしてスポーツを奨励する。益子委員長が示唆した次の理想もとても興味深い発想だ。
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