1枚で1000万円どころか「億超え」も…「ポケモンカード」高騰で“イラストレーター”のサインまで「転売」「偽造」被害に

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サインの偽物まで出現している?

 ポケカのイラストレーターの多くは、ポケカ以外にも様々な仕事を手掛けており、自身で個展を開催している例が多い。そこに目を付けた転売屋個展に押し掛けてサインを貰い、転売する例が相次いでいる。公認イラストレーターの青木俊直氏は、今年5月に自身の個展でサインをした ところ、すぐさま転売されてしまい、X上で「全てのポケモンカードへのサインはお断りせざるを得ません」とポストした。

 ファンとの交流の一環で行ったサインが転売される。このような状況から、他のポケカのイラストレーターの間でも、ポケカにサインはNGとするケースが増えているようだ。しかし、サインが書かれないとなれば自ずと希少価値が高まってしまうのは、コレクター界隈の必然でもある。その影響なのか、サインの偽物まで出現しているようだと、あるカードショップの店員が話す。

「僕はまだ見たことはないのですが、イラストレーターの偽サインも出回り始めているという話があります。今年、人気のイラストレーターのサインを偽造したと疑われるカードが、ネットオークションに出品されている、という指摘がX上でありましたからね。ただ、サインの真贋に関しては店員も鑑定する術がないので、正直、わかりませんし、僕は偽物がきたらお手上げですね」

 結局のところ、サインの真贋は書いた本人しかわからない、ということだろうか。店員によると、偽物を扱うリスクを嫌い、サイン入りカードは取り扱わない店も多いという。また、前出のさいとうなおき氏のサイン入りカードを販売したカードショップは、ネット上で批判を受けた。店のイメージダウンにつながるため、サイン入りカードの販売行為自体を避けるべきだとする考えもあるようだ。

サインの偽造は今後どうなるのか

 ネットオークションやフリマサイトには、漫画家やイラストレーターの偽サイン色紙が多数出回っているが、一向に減る気配は見られない。カードショップの店員によれば、ポケカのイラストレーターの偽サインは大々的に出回っているわけではないが、「かなり偽造が容易な部類に入ると思う」とのことから、今後増える可能性は十分にあるという。メジャーリーガーの大谷翔平のサインまで偽物が出回っているくらいだから、あり得ない話ではないだろう。自衛の手段はあるのか。

「そもそも、高額なポケカの偽物がとんでもない勢いで出回っています。初めの頃は見分けが簡単につきましたが、最近ではパッと見ただけではわからないほど精巧になっていますし、カード鑑定会社のケースの偽物まで出現しているくらい。ネットでは本物の画像を使って出品し、偽物を送る悪質な人物までいます。ですから、偽物を掴まされないためは、オークションやフリマサイトで購入しない、これに尽きます。そして、サイン入りカードは店員だって見分けがつくかどうか怪しいですから、できれば手を出さないほうがいいでしょう」

 サイン入りカードの需要は今後、どうなっていくのだろうか。

「現時点ではサインはニッチな需要だと思うので、僕自身はあまり興味がないんです。アイドルのブロマイドにサインを入れてもらう文化は昔からありましたが、ポケカにサインを入れる文化は近年になって広まり始めたものですからね。ただ、ポケカの人気は衰える気配はありませんし、イラストレーターの人気も上がれば、サインの需要は必然的に高まるでしょうね。」

 最近になって、高額なレアカードの“共同保有権”の販売を始める業者が現れるなど、投機商品的な一面がますます強まっているカードゲーム。個人的な思いを言えば、本来のターゲットである子どもや、ゲームのファンが楽しく遊べて、イラストレーターとサイン会などを通じて健全に交流ができる、そんな未来が訪れて欲しいと思うのだが。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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