カナダに”亡命”した周庭さん 中共の洗脳教育をくぐり抜けても、今後も微妙な状況が続く事情

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中国側の計算

 出所後、周さんはPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされていたという報道もある。福島氏は病状の詳細や家族のことも質問したいと言う。

「家族は香港に残っているという報道もあり、“人質”となってしまう危険性があります。どういう状況になっているのか、周さんに取材できればと考えています。また、『香港を捨てるのか』という批判の声が上がることも予想されます。今、彼女は香港にどのような想いを持っているのかについても聞いてみたいですね。いずれにしても、彼女は志の高い人です。徹底的な脅迫など筆舌に尽くしがたい経験を積んできたかもしれませんが、だからこそトロントでの学びが実りあるものになるのではないでしょうか」

 そもそも、なぜ香港当局が留学を許可したのかという点も重要だ。福島氏も「周さんの側からすると、ダメ元で申請したら、なぜか通ったのかもしれません」と指摘する。

「筋金入りの運動家とは扱いを変えている可能性もあります。例えば、香港政府に対する厳しい報道で知られた日刊紙『蘋果日報(アップルデイリー)』の創業者・黎智英(ジミー・ライ)氏は依然として収監されています。周さんはメディアの注目度が高いため、中国政府にとっても宣伝効果が期待できます。厳しい条件を課した上でカナダ留学など一定の自由を認めることにより、『我々には寛大なところもある』と国際世論にアピールできると計算しているのかもしれません」(同・福島氏)

盗聴や尾行の可能性

 これから周さんを待ち受ける日々は、文字通りの綱渡りだという。中国の批判を再開すれば不利になるのは明らかだが、沈黙を貫くのも賢明ではないという。

「黙っていると、身の安全が保証されません。雄弁と同じように沈黙も不利なのです。彼女が声明を出したのも、特にメディアに関心を持ってもらうことで、自分を守ってもらおうと考えたのでしょう。今後は綱渡りの日々になると思いますが、それは正しい戦略です。周さんは今後も何らかの発言を続けていくはずですし、だからこそ日本のメディアの取材申請にも応じたのでしょう」(同・福島氏)

 カナダという国は、周さんの安全という観点からすると危険も少なくないという。

「中国当局が在外華人の監視拠点として使う『中国海外警察署』を、勝手に第三国内に設置していることが問題視されたことがありました。当初からカナダは監視の行動が活発で、警察署はカナダ国内でも早くから大きな問題になりました。カナダには大きな華人社会が存在するので、当局は目を光らせる必要があるのです。ターゲットに対する盗聴や尾行、嫌がらせなどが確認されており、周さんにも同じことが起きる可能性があります」(同・福島氏)

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