「全て嫌になった」と言い出した妻、そして突然消えた不倫相手…「結婚と恋愛は別」と言って結婚した42歳夫の苦悩
妻とはじっくり話さなくてもいいか
当時、妻は娘の小学校受験に向けて必死の毎日を送っていたようだが、知久さんはほとんど関わろうとしなかった。小学校なんて地元でいいと妻に言うと、妻は『あなたはそう思うということね。わかった』とだけ告げた。
「あれ、と思いました。結婚生活がおかしくなってると。自分が春佳に夢中で、家庭に目配りができていないことに初めて気づいた。ちゃんと話そうと妻に言ったけど、『何を話すの?』と言われて少し動転しました。娘は最終的には地元の小学校へ行くことになりました。よかったと僕はつぶやいたんですが、それもまた妻の怒りに火をつけたみたいで」
結局、妻とは家庭に支障がない限りじっくり話さなくてもいいかと知久さんは諦めた。娘とはコミュニケーションがとれているという実感があったため、大人である妻とは機会を見つけていずれ、と先延ばししてしまったのだ。春佳さんと仕事が今は大事だと優先順位もつけた。
コロナ禍に入ると、勤務先も経営している会社も徐々に暗雲が垂れ込めてきた。貯金を取り崩して妻に生活費を渡したこともある。
「春佳はいつも励ましてくれた。コロナが一段落したら、きっと仕事も前以上にうまくいく。ここは凌ぎどきよ、と。彼女自身、店が危なかったけどじっと耐えていましたから、僕もがんばらないといけないと思っていた」
今年に入って問題が立て続けに…
一時期は止まりかけていた仕事も、春佳さんが言ってくれたように徐々に動き出した。コロナのせいにはできないと彼も仕事に精を出した。
ここ2年ほどは安定した日々が続いていたが、今年になってからさまざまなことが一気に吹きだしてきた。
「正月に妻がいきなり『離婚しよう』と言い出したんです。どうしてと言ったら、『なんだか結婚生活が嫌になった』と。そんな無責任なと絶句しましたよ。そうしたら『あなたのほうが無責任でしょう? 浮気ばかり繰り返して』と。でも結婚当初、お互いに自立した人間同士として干渉しあわないという約束をしたよねと確認したんです。すると『夫婦として性的関係を持たないのも自主性なの?』って。そういえば娘が生まれてから、妻とはほとんど関係を持っていなかった。でもそれは妻がしたくないと言ったのではなかったっけ? あれ? 僕も妻を誘っていなかったんだっけと頭がこんがらがってしまいました。もともと妻を性的対象として見ていなかったんですよ。妻だけど、共同で子どもを育てていく相手と、僕が勝手に割り切ってしまったみたいで……」
あ、妻はそういう関係を望んでいたのかと彼は目から鱗が落ちるような思いだった。妻もてっきり自分と同じ考えだと思い込んでいたのだ。
「だったら誘ってくれればよかったのにと言うと、『そんな下品な真似はできない』って。セックスしたいというのはそんな下品なことなのかと、それもまたビックリして」
数日後、彼は妻の寝室に行ってベッドに潜り込んだ。妻が望んでいるならしなくてはいけないと考えたのだ。だが妻は拒絶した。
「離婚しようとまで思いつめているなら受け入れるはずだと思ったんですが。どうしてダメなのか聞いたら、『なんかもう、とにかくすべてが嫌になったの』と。わかるように説明してほしいと言ったんですが、説明できないと。そう言われたらこっちも困りますよね」
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