複数の人妻と交際しつつ、妻とは手も握らずのデート5回で結婚…42歳男性の10年後に崩れた目論見

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奈那さんとのつきあいは変わらず…

 結婚前からつきあっていた奈那さんとは変わらずときどき会っていた。奈那さんも外資系で働くバリバリのキャリアウーマンで、ひとり息子は家で仕事をする夫がほぼめんどうをみていた。

「奈那のおかげで転職できたようなものでしたし、仕事のことも相談できた。彼女は性にも貪欲で、愛情深いのに嫉妬心のかけらもない。僕からすると天女みたいな女性だった。まあ、ときどき彼女には別の男の影もちらついていたから僕が嫉妬することはありましたが、『既婚者同士がつきあっているのにくだらないこと言わないで』と笑ってかわされていました」

 結婚生活も仕事も、外での恋愛もすべてがうまく回っていたと彼はいう。すべてに百パーセントで立ち向かい、成果を上げていくのが楽しくてたまらなかった。妻にも充分な生活費を渡せるようになったのだが、妻は特別感謝の気持ちを表すわけでもなく、それだけが彼の不満だった。

「今思えば、僕が平均的な年収よりずっと稼げるようになってからも、妻は実家から援助してもらっていたんでしょう。だから僕に感謝する必要なんてなかったんだと思う。それはのちのち知ったことですけどね」

 妻に認められたい、妻に「すごい」と言われたい。そんな気持ちが知久さんにはあったのだろう。だが妻にとって「すごいのはお父さん」であり、夫ではなかった。薄々それを察知しながら、それでも彼は必死に働いた。

「働いて大金を手にする。それが自分の価値みたいになってしまったんです」

「妹がやっているバーに行こう」

 仕事の隙間を埋めるように奈那さんに会っていたが、奈那さんとは同志的な関係であり、無条件に褒めてくれるタイプでもない。そんなときに出会ったのが、春佳さんだった。彼女は一緒に起業した同僚の妹で、4年前の当時、25歳だった。同僚とは血のつながらない妹だという話だった。あるとき同僚が「妹がやっているバーに行こう」と連れていってくれたのが初対面で、知久さんは春佳さんに一目惚れした。

「一般的に言って美人かどうかはわかりませんが、顔を見た瞬間、ドキンとしました。客あしらいもうまいし、僕が何を言っても『すごいですね』『かっこいい』と言ってくれて。それはお世辞だとわかっていたけど、それでもうれしかった」

 彼は春佳さんに惹かれて、ひとりでもバーに通うようになった。

後編【「全て嫌になった」と言い出した妻、そして突然消えた不倫相手…「結婚と恋愛は別」と言って結婚した42歳夫の苦悩】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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