柔道グランドスラム 阿部一二三・詩兄妹に死角はあるのか

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オール一本勝ちの阿部詩

 今大会、パリ五輪代表に内定していた10人中7人が登場、中でも2日目は人気者の阿部兄妹が出るとあって、チケット完売の満員御礼となった。

 妹の詩(23=パーク24)は立ち技、寝技ともに冴えわたる。順当に勝ち上がり、決勝でアストリド・ネト(フランス)と対戦。互いの動きが止まった時、詩がすっと相手の右足の内側に足をかけると、相手はもろくも仰向けに崩れて一本勝ち。59秒だった。

 この日、オール一本勝ちだった詩は、インタビューで「本調子でなかったけど勝ち切れてよかった」などと話した。初めて使った小内刈りが決まったことについては、「練習はしていました。今後、足技が来るかもと相手が思ってくれると、担ぎやすくなったりもするのでいいかな」などと喜んだ。どんな技でもすぐに体得してしまう。天才としか言いようがない。

 筆者が「同じフランスのブシャールさん(東京五輪の決勝で対戦したアマンディーヌ・ブシャール)とはどう違いましたか?」と尋ねると「うーん、組手も違うし、(ブシャールより)もっと低い体勢で入ってくるし、違うかなと思った」と話した。

 詩はこれまで国際大会で決勝まで行かなかったことは一度もない。これも破格の記録だ。

連続技が冴える一二三

 妹の詩が試合を終えた4分後には、兄の一二三(26=パーク24)が決勝の畳へ上った。詩は「兄は心配ないと思うので頑張ってください」とエールを送る。

 準決勝以外は一本勝ちしてきた一二三は、東京五輪にも出場したモンゴルの強豪、ヨンドンペレンレイ・バスフーと対戦した。開始1分過ぎに豪快な大外刈りを放つと、ヨンドンは背中から畳に叩きつけられた。一本勝ちで優勝だった。

 この日の一二三は、前方向に投げると見せかけて、相手が後退しかけたところを瞬時に大外刈りに切り替えての技が光っていた。フェイントをかけて決め技に持ってゆくのは柔道の立ち技の常道とはいえ、咄嗟の切り替えであれだけ深く大外刈りをかけられるのは、柔軟な体の軸や足腰がないと不可能だ。

 強引な背負い投げなど「パワー柔道」とも見られてきた一二三の足技を混ぜたそうした連続技にも磨きがかかってきた。死角は見当たらない。

 囲み会見では、12月3日の優勝に絡めて「ひふみの日となりました」と笑わせた。そして、「柔道が面白いと思ってもらえれば」などと盛んに「面白い」という言葉を発した。東京五輪は丸山城志郎(30=ミキハウス)とのプレーオフを制して代表に内定したが、今回は早々に丸山を引き離して代表に選ばれている。発言にも余裕が出ている。

 この兄妹、階級が共に軽いほうから2番目のため、大きな大会では出場日が同じになりやすい。たいていは先に妹が試合を終えて兄を見守り、共に優勝する。そしてメダルをかけた柔道着姿のツーショットをメディアが撮影する。試合日が違えば、柔道着でのツーショットは難しい。意図せずにスター性を持ち合わせているようだ。

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