成人の4割が肥満のアメリカでやせ薬の需要が急増中…経済に与える意外な影響をどう考えるべきか

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医療費は増加、食品購入量は減少

 やせ薬の需要急増で、米国の雇用主が負担する医療費は来年大幅に増加するとの見通しも出ている(11月17日付ロイター)。

 成人の4割が肥満だと言われている米国で今後「やせ薬」の治療を受ける人の数は「うなぎ上り」に増加することは間違いないだろう。

 経済活動への影響も既に出始めている。10月にはスーパーマーケットチェーン「ウォルマート」が、やせ薬を使用している買い物客の食品購入量が「やや減少している 」と発表した。米国人の旺盛な食欲に支えられてきた大手食品企業や小売業者は、その影響が長期に及ぶことを懸念しているという(11月21日付ブルームバーグ)。

 そのせいで食品企業の株価が軒並み下落している。米国における個人消費の一翼を担ってきた食品需要の減少が、米国経済の潜在成長力にとって大きなマイナスであることは言うまでもない。

 米国人の個人消費が世界経済を支えてきた時代は今後、終わりを迎えてしまうのだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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