成人の4割が肥満のアメリカでやせ薬の需要が急増中…経済に与える意外な影響をどう考えるべきか

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「身の丈に合わない」消費も限界に

 新型コロナのパンデミック時に支給された給付金などの「余剰貯蓄」が底を突いてしまったことも、個人消費の足を引っ張っている。

「懐に金がなければ借りればいい」とばかりに、米国人はこれまでクレジットカードでせっせと買い物をしてきたが、「身の丈に合わない」消費も限界に来ている。

 ニューヨーク連銀によれば、第3四半期にカードの支払いができずに延滞した割合は8.01%と、12年ぶりの高水準だった。同連銀は「米国の家計は2000ドル(約30万円)の予期せぬ出費を賄う能力が過去10年間で最低の水準にある」ことも明らかにしている(11月21日付ブルームバーグ)。

 時間が経つにつれて、FRBの政策金利引き上げの影響が利いてきている形だ。高インフレにもかかわらず好調だった個人消費は、その反動で今後大きく落ち込んでしまうのではないだろうか。

肥満症治療薬が米国人の生活を変える?

「弱り目に祟り目」ではないが、筆者は「肥満症治療薬(やせ薬)の登場で米国の個人消費はさらなる打撃を被るのではないか」と懸念している。

 米国人の旺盛な食品需要は有名だが、やせ薬が米国人のライフスタイルを劇的に変化させる可能性が生まれているからだ。

 やせ薬「ウゴービ」を最初に開発したのは、デンマークの製薬大手「ノボ ノルディスク」だ。もともと糖尿病の治療薬として開発されたが、中枢神経に働きかけて食欲を抑える作用があることから、肥満治療に転用された。

「ウゴービ」は2021年に、米イーライリリーが開発した「ウゴービ」と同タイプの「ゼップバウンド(GLP-1タイプ)」は今年11月に、米食品医薬品局の承認を受けた。現在は供給が追いつかず品薄の状態が続いており、両社は生産能力の拡大を急いでいる。

 薬価(治療費)は年間1万ドルと高いものの、治療の効果が高いことから、既に何百万人もの米国人が治療を受けている。

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