「もの忘れはむしろ健全」「スマホに頼っても大丈夫」 脳寿命を延ばす「忘却システム」とは

ドクター新潮 ライフ

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スマホを使わない方が「頭を使っていない」

 そうはいっても、スマホやタブレットといったテクノロジーに頼ってばかりいたら、頭を使わないのでボケるのがより早まってしまうのではないか。そのように思われる人もいるでしょう。

 しかし、そもそも「頭を使う」とはどういうことでしょうか。それは細々とした情報を記憶することではありません。ある重要な情報と別の重要な情報を結び付けて新しい意味を見いだす。つまり、「考えること」こそが「頭を使うこと」なのです。スマホで調べればすぐ分かるような情報の記憶に労力を割き、考えることをおろそかにする。こちらのほうがよほど「頭を使っていない」といえるのです。

 とはいえ、脳は膨大なエネルギーを消費しています。重さは約1.4キロしかないにもかかわらず、全身が取り入れる酸素やエネルギーの実に25%近くを脳が使っているのです。「考えること」ばかりを続けていれば、脳を酷使することになり、脳の疲弊、脳細胞の死、そして脳の萎縮へとつながってしまいます。

「集中系」と「分散系」

 脳には、大きく分けてふたつのシステムがあります。「集中系」と「分散系」です。前者は、ある課題や目的を達成するため、まさに意識を集中させている時に活性化する脳領域です。そして後者は、いわば「ボーッとしている時」に活性化する領域です。

 注目すべきは、集中系と分散系はトレードオフの関係にある点です。集中系が活性化すると分散系は抑制され、反対に分散系が活性化すると集中系は抑制される。そのため、両者を適度に活性化し、また適度に休ませることが、脳の一部を酷使するのを防ぎ、全体的な脳の健康を保つことに役立つのです。

 ちなみに、ボーッとしている時に活性化する分散系には、大した意味がないのではないかと思われがちです。しかし、集中系は脳の一部だけを使っているのに対し、分散系は大脳の多くの部分を均等に活性化するためのシステムであり、かなり大きなエネルギーを要します。また、分散系が記憶の整理・統合をつかさどっていることも近年の研究で分かってきており、ボーッとしているからといって脳が働いていないわけではありません。

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