漁師一家の自宅にヒグマが侵入、冷蔵庫を荒らして…北海道・羅臼町“クマ騒動”その後 被害女性が語る「恐怖の瞬間」「昔と今の違い」
一部の“動物愛護主義者”は別かもしれないが、普通の人なら自宅の敷地内でクマと遭遇したら心の底から恐怖を覚えるだろう。10月17日の夜、富山市の住宅敷地内で、この家に住む79歳の女性が死亡した。死因はクマの襲撃と見られているという。
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【閲覧注意】「胃の中の大半が泥!」当時、住民を震えさせた“250キロ”の巨大ヒグマ 恐ろしい爪痕が残る当時の家屋も
読売新聞オンラインは10月19日、「自宅敷地で女性死亡、富山でクマ出没相次ぐ…県担当者『危険が本当に身近に迫っている』」との記事を配信。近隣住民の《「昔からクマが出る地域だが、これほど多く出没したことはなく怖い」》という切実な声を伝えた。
北海道新聞も11月20日の朝刊に「クマ被害10倍 秋田『異常』*市街地8割 捕獲追い付かず」との記事を掲載。北海道内でもクマの被害が多発しているが、それを上回る被害が出ている秋田県の深刻な現状を紹介した。
記事では北秋田市の自宅敷地内でツキノワグマに襲われた男性の被害状況を詳報した。体調1メートルのクマと遭遇し、逃げようとしたが押し倒され、数十秒間、キバやツメで攻撃された。右の耳たぶは噛みちぎられ、頭部には骨まで達する傷を負ったという。
今も昔も、自宅でクマに遭遇するようなことはまずなかった。そのため過去に起きた類似のケースを調べると、今と同じような驚きのトーンで報じられていたことが分かる。
例えば、写真週刊誌「FOCUS」(新潮社・休刊)は1986年10月3日号に「羅臼の熊騒動始末――冷蔵庫を襲った熊の胃の中の“異常”」との記事を掲載した。
台所にヒグマが侵入
北海道羅臼町でクマが大暴れし、住民が自宅の台所で遭遇した事態を報じたものだ。記事を読むと、今年になって北海道や東北地方を中心に全国で多発する“クマ禍”との共通点と相違点が浮き彫りになり、極めて興味深い。
1986年9月16日、羅臼町にある民家の台所にヒグマが入り込んだ。時間は午後11時半ごろだったと見られている。
この民家には夫婦と子供3人、そして祖父と祖母が住んでいた。一家は漁業で生計を立てていたこともあって朝が早く、すでに就寝していた。
最初に祖父が台所で不審な物音がするのに気づき、戸を開けて中を見た。すると流しの前にヒグマがいた。祖父と祖母は2階で寝ていた夫婦の部屋に逃げ込んだ。
助けを求めようにも当時は携帯電話などない。電話は1階に設置していたため、夫婦は協力して受話器の前にたどり着き、何とかSOSを伝えた。ヒグマは夫婦が2階にいる時は大きな物音を立てていたが、1階に降りていくと急に静かになり、人間の気配を探ってきた。その頭の良さに、さらなる恐怖を感じたという。
クマに出て行ってもらおうと、夫婦は2階から物を投げたり大声を出したりと、ありとあらゆる手を使ってみたが、全く効果はなかった。結局、1時間後くらいすると、クマが自ら家の外に出た。
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