「次の子が産みたくなる」 奇跡の保育園「やまなみこども園」の秘密 「散歩で摘んだ野草を給食に」「着替えは毎日3着分」

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散歩中に採った実や葉を給食に

 園が目指している主体性を刺激する保育は、身体活動だけでなく、食事においても一貫している。

 食育の一つとして田植えや芋ほりといった行事を年に何度も行うのはもちろん、給食で使用するみそ、梅干し、ふりかけなどはすべて子供たちとともに作った自家製だ。そして日常の中でも頻繁に自然と食を結び付ける取り組みをしている。

 たとえば日々の散歩に、給食担当のベテラン職員・池見順子(73)が同行することがある。池見は路上に生えている草木の前で立ち止まり、どの葉や実が食べられて、どう調理するとおいしくなるかを教える。そして、そこで採った葉や実を園に持ち帰り、料理するところを見せ、給食やおやつとして出すのだ。

 子供たちは自分が発見して採ったものなので、どんなものでもうれしそうに口に入れる。

 池見は言う。

「給食ならシソやシロツメクサといった野草を摘んできて天ぷらにして出しますし、デザートならヤマモモを焼いたものを出したりします。うちで提供しているおやつはすべて手作りで、子供たちに作ってもらうこともあります。この前は自分たちでもいだビワを使ったジャムパンを作りました。子供たちは自ら採ったからこそ、自分で調理したがります。スーパーで買った具材を見ても何とも思いませんが、生きている草や実を自分で摘んで持ち帰れば、そういう気持ちになるのです」

ジャムやチーズも自家製

 食べ物作りは給食以外でもよく行われている。筆者が取材で滞在していた時も、ある先生は子供たちと道で採ってきたヤマモモでジャムを作っていた。また、別の先生は牛乳、塩、レモン汁などを使って自家製チーズを作っていた。後者を味見させてもらったところ、チーズケーキを思わせる風味で、手伝った子供たちも感動してあっという間に食べつくした。

 池見は続ける。

「うちの子たちは給食で何を出しても好き嫌いを言わずに完食します。毎日たくさん体を動かしているだけでなく、自分たちで採ってきたり、作ったりしたものが出されるので、ちゃんとおいしく食べるのです」

 近年、一般の保育園では子供の好き嫌いが激しく残飯が非常に多くなったり、顎の力が弱くかみ砕くことができずに飲み込んで、食事を喉に詰まらせたりすることが多発しているらしい。だが、この園ではそうしたこととは無縁なのだ。

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