安楽智大の“パワハラ問題”が「楽天」の致命傷に…「暗黒期」に突入しかねない危険な状況
観客動員数は12球団ワースト
ならば、投手も野手も、新外国人選手で戦力を補強したいところだ。しかしながら、楽天は、外国人の補強戦略にも、多く課題を抱えている。過去5年間を振り返ると、中心選手として機能した外国人選手は、リリーフの宋家豪とブセニッツ、外野手のブラッシュとロメロのみ。宋以外は既に退団している。
特に、野手は苦戦が目立つ。過去3年間で、規定打席に到達した外国人選手は1人もいなかった。これは楽天だけに限ったことではなく、どの球団も外国人の不振に苦しんでいる。こうした点を踏まえても、来季に向けて、楽天が“助っ人”に過剰な期待をかけることは、リスクが大きい。
ここまで、チームの厳しい現状を見てきたが、問題はこれだけに留まらない。球団と親会社の経営にも課題が残されている。今年からコロナ禍で禁止されていた「声出し応援」が解禁となり、どの球団も観客動員数が戻りつつあるにもかかわらず、楽天の観客動員数は12球団でワーストに甘んじた。
楽天グループは、楽天モバイル事業の収益化が遅れ、2022年12月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が3728億円の赤字だった。赤字幅は過去最大だ。今年は、昨年に比べると赤字幅が改善しているとはいえ、2023年1~9月期連結決算は、最終損益が2084億円の赤字(前年同期は2625億円の赤字)となった。
楽天本体の不振は、球団の経営に影響しているとみられる。10月17日に就任した今江敏晃新監督の推定年俸は4000万円と、他球団の監督と比べてかなり低く、野球ファンの間で話題となった。石井一久GM(※来季からシニアディレクター)時代は、他球団で実績がある選手をかき集めて、チームの強化を図っていたが、今では、従来のやり方が難しくなった。
「緊縮財政」下での立て直し
在京スポーツ紙の記者は、楽天の現状について、以下のように話す。
「楽天本体の経営が苦しいことは明らかですから、球団を買い取りたい企業があるという噂です。ただ、(楽天グループが)毎月100億円単位で赤字が出ている現状を考えると、球団を売却してもほとんど穴埋めにはなりません。12球団しかないプロ野球チームを持っている価値を、三木谷(浩史)オーナーもよく分かっていると思いますので、すぐに球団売却ということはないでしょう。ただ、球団としても親会社の経営が苦しいことで、あらゆる面で影響が出てくることは間違いない。“緊縮財政”の中でチームを立て直すのは簡単ではないでしょう」
本記事の前半で言及した松井のメジャー移籍についてだが、ポスティングシステムであれば、球団に譲渡金が入るが、今回は、松井が海外フリー・エージェント(FA)権を行使したもの。球団に譲渡金が入らない。これも大きな痛手だ。
2013年に球団創設以来初となるリーグ優勝、日本一を達成して、はや10年。ここまで列挙した危機的な状況を、楽天球団は、どのようにして乗り越えることができるのだろうか。
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