安楽智大の“パワハラ問題”が「楽天」の致命傷に…「暗黒期」に突入しかねない危険な状況
チーム防御率はリーグ最下位
現在、低迷しているプロ野球チームといえば、セ・リーグは中日、パ・リーグでは日本ハムになる。ともに2年連続最下位に沈み、かつての強さは見る影もなくなっている。しかし、それ以上に、“危険な状況”に追い込まれつつある球団がある。それは、楽天だ。過去5年の成績を見ると、3位が2回、4位が3回と常にAクラス争いを演じる一方で、暗黒期に突入しかねない危険性が出ている。【西尾典文/野球ライター】
【写真】安楽のインスタには、先輩“マー君”との笑顔の2ショット写真も
まず、大きな課題は、投手陣である。今年のチーム防御率は、3.52で、リーグ最下位となった。先発投手を投球イニング数が多い順に並べると、則本昂大(32歳)、田中将大(35歳)、岸孝之(38歳)となっており、ベテランへの“依存度”が高いかがよく分かる(※年齢=2023年シーズン中の年齢)。
若手投手に目を転じると、今年は、大卒ルーキーの荘司康誠が19試合に登板して5勝3敗、同じく大卒ルーキーの渡辺翔太が51試合に登板して8勝3敗1セーブ25ホールドをそれぞれマークした。また、高卒3年目の内星龍は、53試合に登板し、4勝2敗7ホールド、防御率2.28とフル回転の活躍を見せている。
とはいえ、一軍で戦力となった24歳以下の若手は、彼らしか見当たらない。二軍にはブレイクが期待できそうな選手も少なく、世代交代が進んでいない。
「絶対的なクローザー」のメジャー移籍
こうした厳しい状況に、“絶対的なクローザー”松井裕樹のメジャー移籍が追い打ちをかけそうだ。松井は、抑えに定着した2015年以降の9年間で、30セーブ以上を6度記録している。今年も59試合に登板し、2勝3敗、39セーブ、8ホールド、防御率1.57という見事な成績を残し、自身3度目となる最多セーブのタイトルを受賞した。
松井に代わるクローザーとしては、現時点で前出の渡辺が候補に挙がっている。とはいっても、抑えとして未知数な部分が多いうえ、渡辺が抜ける中継ぎ陣にしわ寄せが行くことは間違いない。それに加えて、今年57試合に登板した安楽智大は、チームメイトへの“パワハラ問題”が浮上し、自由契約になった。松井のみならず、安楽までいなくなると、楽天のブルペンは一気に崩壊すると言っても過言ではない。
一方、野手陣の戦力も不十分だ。今年のチーム得点数はリーグ2位、チーム打率はリーグ3位と悪くない。ただ、中心選手の顔ぶれを見てみると、浅村栄斗をはじめ、岡島豪郎や島内宏明、鈴木大地、阿部寿樹が、いずれも33歳を超えており、投手陣と同様にベテランへの“依存度”は非常に高くなっている。浅村以外の4人は、シーズンを通しての活躍が難しくなっており、来年はさらに成績を落とす可能性が高い。
今年は、外野手の小郷裕哉と、ショートで頭角を現した村林一輝といった中堅選手が大きく成績を伸ばした点はプラス材料だ。だが、他の選手を見渡しても、小深田大翔や辰己涼介、山崎剛はいずれも20代後半のチャンスメーカータイプばかり。強打者タイプで、一軍の戦力になった若手選手は、捕手の安田悠馬ぐらいだ。
選手の特性に合わせて、機動力を生かした攻撃で得点する野球ができているとはいえ、安定して長打と打点を稼げる選手が浅村だけで、それに続くような主軸を担える若手選手が出てこない。
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