【タイガー・ウッズ】「僕のゴルフは錆ついている」でも本格復帰か 2024年のPGAツアーの展望を語る

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理事になった理由

 リブゴルフから高額の移籍料をオファーされてもそれを拒絶し、PGAツアーで戦い続けてきた選手たちが、今後、満足できる環境を得られるかどうかは「何より大切なことだ」とウッズは会見で繰り返し強調した。

「6月に統合合意が突然発表されたとき、みんなと同じように僕もとても驚かされた。交渉が水面下で進められ、僕たち選手が完全に蚊帳の外に置かれたことに、とにかく驚かされた。これからはそうならないように、僕たち選手がコトの進行に必ず関わっていけるようにしなければならないと思った。だから僕は、理事になることを決めたんだ」

 ウッズ自身、右足や肉体全体のケアを継続し、試合勘を呼び起こす一方で、マキロイと共同で発案したテクノロジーを駆使した新ゴルフリーグ「TGL」の創設準備に追われている。試合会場として建設中だった大型ドームが停電によるエアシステムの故障によって一夜にして崩れ落ちる突発事故に見舞われるなど、課題が山積しているのだ。

 さらには、「ウッズの大会」である今週のヒーロー・ワールドチャレンジや来年2月のジェネシス招待の開催準備、ウッズ財団のさまざまな活動、そして長女サムちゃんと長男チャーリーくんの父親としても多忙を極めている。

「もう裁判なんて起こらない」

 だが、それでもウッズがPGAツアーの理事を引き受け、身を粉にしてPIFとの統合の最善策を探っている理由は、「インパクトを与えられる幸せを噛み締めている」からだそうだ。

「以前の僕はボールを打つことでゴルフ界にインパクトを与えてきた。でも今は、以前とは違う形でゴルフ界や世の中にインパクトを与えることができる。その幸せを僕は噛み締めている」

 PIFとの統合内容を確定して発表するデッドラインは、今年12月31日とされている。記者から「果たして間に合うのか?」と問われたウッズは、自信さえ漂わせながらこう答えた。

「良い方向へ向かっている。PGAツアーの全選手の意見を聞きながら、全選手にとっての最善策を見つけようとしている。これからのPGAツアーでは、もはや裁判なんて1つも起こらないはずだ」

 2024年のPGAツアーは、ウッズの試合出場が増え、マキロイの戦意が一層高まり、リブゴルフに移った選手も返り咲き、そしてPGAツアーの選手たちが今まで以上に奮起して、賑やかで華やかな世界一のPGAツアーに戻ってくれそうな気配だ。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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