優勝・霧島は「自分に克てるようになった」 鶴竜親方が見た九州場所、続く「大関候補ナンバー1」は?
現役時代は、右四つからの下手投げを得意とするなど、「玄人好み」の相撲で活躍した、71代横綱・鶴竜。横綱を41場所務め、2019年春場所で引退した後は、鶴竜親方として、陸奥部屋の部屋付き親方を務めている。九州場所で2度目の優勝を果たした大関・霧島は、陸奥部屋の所属。かつては兄弟子として、今は親方として霧島を見守っている鶴竜親方に、「1年納めの九州場所」を振り返ってもらった。
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師匠の思いが通じた霧島の優勝
――九州場所では霧島が13勝2敗で2度目の優勝。力強い相撲で、来年初場所では「綱取り」に挑戦することになりました。
大関に昇進した7月の名古屋場所は、初日の前に肋骨を痛めて、初日から休場。結果的に負け越して、本人はとても悔しい思いをしたんです。そして、9月の秋場所は、いきなり「カド番」ですよね。相当のプレッシャーの中での戦いでした。
今場所を迎えるにあたって、10月の秋巡業でしっかり稽古ができて、(九州場所のために)福岡に乗り込んでからも体調がよく、調整がうまくできていた。「悔しさ」という経験値が、霧島を成長させたのだと思います。
――師匠の陸奥親方(元大関・霧島)は普段寡黙な方ですが、今回の優勝は「親孝行をしてくれた」と言って、たくさんの笑顔を見せていました。
大関昇進と同時に、師匠から受け継いだ「霧島」の四股名で優勝したのですから、師匠も喜びがひとしおだったようですね。来年春に定年を迎える師匠にとっては、「最後の九州場所」。「なんとか霧島に優勝してほしい」という師匠の思いが通じたのだと思います。
――井筒部屋に所属していた鶴竜親方(当時、横綱)は、井筒親方(元関脇・逆鉾)が亡くなられたことで、陸奥部屋に移籍。そこで霧島と兄弟弟子になったわけですが、伸び悩んでいた霧島にいろいろとアドバイスをしていたそうですね。
霧島(当時、霧馬山)は、なかなか体が大きくならなかったので、チャンコの時に私がノルマを与えて、白飯を食べるようにしていたんですよ。そうしたら体ができてきて、自信を持って相撲を取れるようになってきた。(相撲に対しての)具体的なアドバイスはほとんどしていません。
まあ、誰かに言われて、行動を起こすようじゃダメなんです。自分で気づいて、自分に克つことが重要。霧島はそれができるようになってきたのだと思います。
予想外の活躍をみせた熱海富士はケガに注意
――先場所に引き続き、優勝争いに絡んだ21歳の熱海富士に関してはいかがでしょうか?
9月の秋場所、優勝決定戦で大関・貴景勝に敗れて、優勝を逃した悔しさが、熱海富士の経験値を上げましたね。11勝を挙げて、敢闘賞を受賞。正直、今場所もここまで活躍するとは予想していなかったです。
ただ、彼は肩やヒジを負傷していて、「ちょっと危ないな」という相撲もけっこうあるんです。これ以上、ケガをしないように気をつけてほしい。「有望」だと言われながら、ケガで相撲人生を棒に振った力士を数多く見ていますからね。
――同じく11勝で、敢闘賞を受賞した一山本は、先場所は十両で相撲を取っていた力士です。
先場所、十両で優勝したことが大きなキッカケになりました。相撲に流れがあるし、自信を持って前に出ているところがいい。一山本は、長身(188センチ)で足がとても長くて、細かったんです。足の長さは、下半身に重心を置くことが大切な力士の世界では不利なのですが、先場所くらいから、足に筋肉がついて太くなった。足腰が安定して、馬力が相手に伝わるようになったのが、大勝ちの理由ですね。
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