卓球王国・中国が恐れた「大魔王」伊藤美誠は、どうして勝てなくなったのか? 五輪代表の座が危ぶまれる「3つの理由」
ママ、大丈夫よ
加えて、伊藤には臀部・腰部の故障もあり、現在も心身ともに万全というにはほど遠い状態という。
現在、五輪の代表の座を巡る選考レースは、早田ひなが大差をつけてトップを独走しており、ほぼ代表“当確”。2位の平野美宇と3位・伊藤は、僅差でシングルスの代表権を争っている。残る選考会は、2024年1月の全日本選手権のみ。伊藤にとってはかなり厳しい戦いが続くが、そこで雌雄は決する。一方、その2人の争いに割って入ってくるのが15歳の張本美和だ。11月の選考会を兼ねた全農カップで伊藤を下し、決勝では現在の女王・早田にも勝利して初優勝を果たした。反対に、伊藤はこの大会1日目に張本戦を含め2連敗。2日目にも平野とのライバル対決に敗れ、7位という納得できない結果に終わった。五輪代表の3枠めは日本卓球協会の推薦による。全日本の戦いぶりにもよるが、将来性を見込んで張本が3位の伊藤に替わり選出されるとなると、伊藤は五輪の団体戦にも出場できない可能性もあるのだ。
卓球選手だった母の指導を受け、幼いころから頭角を現した伊藤は、同学年の平野美宇、早田ひなとともに黄金世代と呼ばれ活躍してきた。まだ10代だったある年、国際大会で優勝を果たした伊藤。母はその金メダルを楽しみに帰国を待っていたが、娘はそれをどこかに忘れて帰ってきた。落胆する母に伊藤はこう告げたという。
「ママ、大丈夫よ。五輪で金メダルを獲ってママに掛けてあげるから」
親子鷹
静岡県磐田市にある伊藤家のダイニングキッチンには卓球台が置かれ、ここで伊藤の礎が築かれていった。トイレに入ると、前の試合でよかった点や反省点、今後の課題などが、母の字で記されている。伊藤は、「いまの自分があるのは母のお陰」と感謝の念を忘れていない。まさに親子鷹なのだ。
伊藤の母は、伊藤美誠が6歳のころこんな手紙を娘にあてて書いている。
<オリンピックに にほんだいひょうででようね!!>
これに対し伊藤は、「オリンピックに出て優勝したい」というタイトルの作文を書いた。幼いころから母娘で目指してきた五輪の金メダル。果たして伊藤は、代表権を獲得してそのスタートラインに立つことができるだろうか。絶体絶命の現状を覆し、パリ五輪出場、そしてメダル獲得という起死回生の必殺カウンター「美誠パンチ」は炸裂するだろうか。
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