卓球王国・中国が恐れた「大魔王」伊藤美誠は、どうして勝てなくなったのか? 五輪代表の座が危ぶまれる「3つの理由」

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遠のく夢

 相手の攻撃を倍返しするような強烈なカウンター「美誠パンチ」は、伊藤美誠(23)の代名詞だった。だが、その美誠パンチが最近、影を潜めている。相手が研究し、対策を講じているのか、それとも、美誠パンチそのものの威力が衰えてきたのか――。いずれにせよ、伊藤らしさがなくなり、パリ五輪代表の座すら危うい状況に追い込まれている。

 伊藤は2021年の東京五輪の混合ダブルスで金メダルを獲得。団体戦とシングルスでもそれぞれ銀メダル、銅メダルを獲得するなど、日本女子のエースとして君臨し、日本卓球界の悲願である「打倒中国」の最右翼と目されてきた。日本女王にも3度輝き、世界ランクは最高2位。そんな伊藤を卓球王国・中国は「大魔王」と呼んで、警戒していた。

 ところが、2023年のアジア大会で代表落ちし、パリ五輪の日本代表の選考レースでも現在3位に甘んじるなど、ここ最近の伊藤は明らかに精彩を欠いている。選考レースでは上位2名が五輪のシングルスに出場できるため、このままいけば五輪のメイン種目であるシングルスに出場できない可能性すらある。五輪では団体戦用にもう1名が、日本卓球協会の推薦という形で選ばれるが、それでは若い頃からの伊藤の夢である“シングルスでの五輪チャンピオン”が遠のいてしまう。

燃え尽き症候群

 なぜ、伊藤の調子は上がらないのか。卓球担当記者が解説する。

「スポーツ界の習わしですが、急上昇してきた選手や上位に君臨する選手に対して、他の選手は徹底的に研究を重ねて対策を練り上げ、何とか勝とうと必死に努力します。今の伊藤は研究し尽くされ、袋小路に追い詰められている状況です。具体的には、ピッチの速さが特徴の伊藤のプレーに対し、相手選手は意図的に緩いボールを混ぜている。伊藤はタイミングを狂わされて、本来のプレーを見失っています。そのせいで美誠パンチも出せなくなっている。自分のリズムが壊されてしまったのです」

 もう一つ、メンタル面の不調を日本卓球関係者が指摘する。

「東京五輪の混合ダブルスで金メダルを獲得し、燃え尽き症候群に陥ってしまったことが考えられます。東京五輪は1年延期されて開催されたため、次のパリ五輪までは3年しか時間がない。モチベーションが下がった状態で、もう1度気持ちを立て直す間がないまま選考会や国内の大会、海外遠征と、過密なスケジュールをこなさざるを得ないことも精彩を欠いている要因かもしれません」

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