遂に支持率20%台…ジャーナリストが指摘する「岸田内閣」3つの構造的欠陥「今後も負のスパイラルを下る」
かつての「水面下の調整」がなくなった?
この元官僚は、税に関する政策決定で、2018年に安倍政権が消費税10%を決めた舞台裏を挙げる。
当時、政権幹部らはあからさまに賛否両論を展開した。麻生太郎財務相は「やる」とあらゆる場で公言。安倍氏の経済ブレーンの甘利明氏は「慎重」にと発言。そのほか閣内や党内の実力者たちの意見も真っ二つ。
じつは当時、私は官房長官だった菅義偉氏に直接聞いた。閣内不一致、党内不一致じゃないか。決着させられるのか―と。菅氏は笑ってこう答えた。
「大丈夫。ちゃんと(閣議のあとなどに)みんなで顔つき合わせて打ち合わせしてるから」
つまり、麻生氏や甘利氏や党の幹部らの発言はあえて役割分担しているのだった。世論は賛否ある。その中で、政権内や与党内でも賛否議論百出の状態を作り、最後には安倍首相が苦渋の決断をするという流れだ。そうやれば、反対派のガス抜きもできるし、国民からは侃々諤々の末の決断に見えるというわけだ。
また当時、反対していた公明党に対しては、公明党が主張していた軽減税率という交換条件を菅氏がまとめ上げ、創価学会の幹部などと折衝、10%を受け入れさせた。裏で仕組まれた見事な「ガバナンス」だ。
「今回の減税で、こうした水面下の調整があったとは思えない。いま根回し役の側近は一体誰なのか。一事が万事これから他の重要政策でも危ぶまれる」(前出元官僚)
ダブルの危機管理がピンチを救っていた安倍政権
菅氏にはこんなエピソードもある。
2012年、安倍政権発足直後に、私は官房長官に就いた菅氏にまずやりたいことは何かを訊ねた。
「内閣人事局を作りたい」
私は政策を聞いたのに返ってきたその答えにゾッとした。政権運営のためにそこまでやるのかと。つまり、内閣人事局は、官邸が霞が関の官僚人事を決める仕組みだ。政権がやりたいことをやるために抵抗する官僚を人事で黙らせる。言うことを聞かない官僚は飛ばす……。ガバナンスにおいてこれほど効果的で恐ろしい手段はない。
菅氏はその後、この制度を利用して人事を駆使。霞が関の省庁を掌握し、政治主導ガバナンスをキープした。また、警察庁や公安、内調などにも情報網を張り巡らせ、身体検査はもちろん、スキャンダルや不祥事についても情報収集し先手対応した。
安倍政権には、側近に経産省官僚の秘書官だった今井尚哉氏もいた。安倍首相を守る危機管理に徹したため菅氏と対応がぶつかることもあった。
たとえば、閣僚の不祥事が発覚した際に、菅氏は国会運営などを考えて早くクビをきるべきだと首相に進言する。一方の今井氏は、いま更迭すると安倍首相の任命責任に関わってくるので少し待って通常の内閣改造でさらっと代える方がいいと進言する。
政権全体を守るか、安倍個人を守るかの違いはある。しかし、ダブルの危機管理が政権のピンチを救ってきたのだ。
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